カンショ「ダイチノユメ」、「こなみずき」栽培によるネコブセンチュウ密度抑制効果

要約

サツマイモネコブセンチュウのレースSP2発生圃場でカンショ「ダイチノユメ」、「こなみずき」を栽培しても、被害はほぼ発生しない。これらの品種の栽培翌春の作土では線虫密度が低くなり、次作のカンショ「コガネセンガン」の被害もやや軽減される。

  • キーワード:サツマイモ、サツマイモネコブセンチュウ、線虫抵抗性品種、レース
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域・畑土壌管理グループ
  • 代表連絡先:電話0986-24-4271
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

南九州地域(宮崎県及び鹿児島県)のカンショ生産ほ場では、サツマイモネコブセンチュウ(以下線虫)が広く発生している。この線虫は、カンショ品種に対する寄生性の違いから複数のレースに分けられ、南九州地域では、SP2が主要レースと報告されている。これまでカンショでは、線虫発生ほ場において塊根の被害症状や根系の根こぶ形成を基準に選抜することで、線虫抵抗性品種が育成されてきたが、育成段階で抵抗性強とされる品種の中には、被害は受けないものの線虫を増殖させる品種が含まれている。一方で、近年抵抗性強の品種の中でSP2を増殖させないSP2抵抗性の品種が普及しつつある。そこで、SP2抵抗性の原料用カンショ品種「ダイチノユメ」、「こなみずき」をSP2発生圃場で栽培した場合の被害状況、線虫密度抑制効果及び次作の被害軽減効果について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 線虫抵抗性が強のカンショ品種「ダイチノユメ」、「こなみずき」では、線虫発生圃場で栽培しても総塊根重の98%以上が無被害と判定され、ほとんど線虫害が発生しないが、線虫抵抗性がやや弱の「コガネセンガン」では線虫害が発生する(図1)。
  • 各品種栽培翌春の作土(深さ10~15cm)の線虫密度は、「コガネセンガン」栽培後に比べ、SP2に抵抗性である「ダイチノユメ」栽培後及び「こなみずき」栽培後では低い。心土(深さ25~35cm)でも同様の傾向が認められるが、作土に比べ、全体的に線虫密度は高い傾向がある(図2)。
  • 「ダイチノユメ」栽培後及び「こなみずき」栽培後では、翌年栽培した「コガネセンガン」の被害が、「コガネセンガン」栽培後に比べやや軽減される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 生産者が線虫抵抗性の原料用カンショ品種栽培を導入し、線虫抑止型の作付体系を組み立てる参考情報として活用できる。
  • SP2に抵抗性の品種を栽培した後でも一定数の線虫が心土には残存するので、深根性の根菜類を栽培する場合には、線虫により加害される可能性に留意する必要がある。
  • 主要レースがSP2である南九州地域を対象とした成果である。「ダイチノユメ」及び「こなみずき」は、SP1及びSP2に対しては抵抗性の品種であるが、他のレースに対する抵抗性は不明なので、主要レースが異なる地域では留意する必要がある。

具体的データ

図1 サツマイモネコブセンチュウ抵抗性カンショ品種を同線虫発生圃場で栽培した場合の被害状況;図2 前作カンショ品種の違いが翌春のサツマイモネコブセンチュウ密度に及ぼす影響;図3 前作カンショ品種の違いが次作「コガネセンガン」の被害に及ぼす影響

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:鈴木崇之、岩堀英晶、安達克樹
  • 発表論文等:鈴木ら(2017)日線虫誌、47(1):9-14