粗飼料用オオムギの穂形状は黒毛和種育成牛の嗜好性に影響を及ぼす

要約

ホールクロップ利用において、無芒および三叉芒のオオムギは硬い芒がないため、通常の芒を持つオオムギに比べて、黒毛和種育成牛の嗜好性が高い。

  • キーワード:粗飼料用オオムギ、穂形状、嗜好性、黒毛和種育成牛
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域・飼料生産グループ
  • 代表連絡先:電話096-242-7682
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

オオムギは早熟で耐寒性が強く播種適期が広い、子実割合が高く高栄養価、含水率が低く良質なサイレージが得られるなど、飼料用作物としての長所が多く、一部の県で飼料作物奨励品種に採用されている。しかし、一般のオオムギ品種の穂には鋸歯があり硬く長い芒を持っており、牛が採食したときに咳き込みを起こすなど、家畜が忌避する傾向があることが指摘されており、粗飼料としての利用拡大を妨げる要因となっている。そこで飼料用オオムギの育種改良目標を明らかにするため、遺伝的背景が同じで、穂の形状が異なる品種・系統を用い、穂の形状の違いが家畜の嗜好性に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 通常芒と比較して、三叉芒は芒が花器に変化して柔らかい形状となり、無芒は芒が欠損している(図1)。
  • 黄熟初期に刈り取って、35 ̊Cで通風乾燥調製した人工乾草では通常芒の総繊維を示すNDFom含量は無芒と同程度で三叉芒よりも低く,リグニンを示すADL含量も他より低い傾向がある(表1)。化学成分の点で通常芒の採食性は他より低くなる要素は少ないと考えられるが、黒毛和種育成牛の平均嗜好度は通常芒<三叉芒=無芒(P<0.05)である(図2)。
  • 黄熟初期に刈り取り後、予乾なし(水分68%)で細断型ロールベーラで調製したサイレージにおいて、発酵品質を示すV2-scoreは通常芒、無芒が80点以上の良評価であるのに対し、三叉芒は23点と不良の評価であった。発酵品質の点からは三叉芒の嗜好性が他より低いと推測されるが、黒毛和種育成牛の平均嗜好度は通常芒<三叉芒=無芒(P<0.1)で乾草と同様の傾向である(図3)。
  • オオムギの黒毛和種育成牛における嗜好性は化学成分や発酵品質などの内的要因(質的側面)よりも外的要因(形態的特徴)である芒の物理性が影響している可能性が高い。

成果の活用面・留意点

  • 飼料用オオムギ品種育成において、育種改良目標として活用できる
  • 本成果はオオムギ品種「はるか二条」(普通芒)およびその無芒,三叉芒の準同質遺伝子系統の3品種・系統で比較したものである。

具体的データ

図1 オオムギの穂形状;

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2012~2016年度
  • 研究担当者:服部育男、神谷充、塔野岡卓司、加藤直樹、林義朗、細田謙次
  • 発表論文等:服部ら(2017)日暖畜会報、60(1):47-50