"やや早"熟期で高温登熟耐性が優れる多収水稲新品種候補系統「西海291号」

要約

「西海291号」は「きぬむすめ」、「日本晴」よりやや遅い熟期の"やや早"に属するうるち種である。「きぬむすめ」より約7%多収で、高温登熟耐性に優れ、倒伏に強い。炊飯米はやや硬く、炊飯米の食味は良好である。

  • キーワード:イネ、多収、高温登熟耐性、良食味
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・水田作研究領域・稲育種グループ
  • 代表連絡先:電話096-242-7682
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、家庭用米の消費が減少し、業務用米の需要が増加傾向にある。米穀業関係者からは炊飯米に適度な硬さがあり、玄米品質が優れる業務用米が求められている。また、農業経営者からは米価の低迷による所得の減少から多収米品種の育成が強く求められている。
そこで、炊飯米に適度な硬さを持つ業務用多収米品種を開発する。

成果の内容・特徴

  • 「西海291号」は、早生で良食味の多収系統「泉1801(後の「西海258号」)」と早生で極多収の良食味系統「関東222号(後の「あきだわら」)」を人工交配した後代から育成された(表1)。
  • 福岡県における普通期移植栽培での出穂期は「きぬむすめ」、「日本晴」とほぼ同じで、成熟期は「きぬむすめ」より3日程度遅く「日本晴」より7日遅く、暖地では"やや早"に分類される(表1)。
  • 稈長は「きぬむすめ」とほぼ同じで、穂長は約1cm長く、穂数はやや少ない(表1)。
  • 玄米重は、「きぬむすめ」に対して標肥では7%、多肥では6%多収である。島根県での移植栽培では、「コシヒカリ」に対して30%多収である(表1)。
  • 耐倒伏性は「きぬむすめ」より優る"強"である(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型は"PiiPik"で、葉いもち圃場抵抗性は"やや弱"、穂いもち圃場抵抗性は"やや弱"である。白葉枯病圃場抵抗性は"やや弱"で、トビイロウンカには"中"程度の抵抗性を示す。穂発芽性は"難"である(表2)。
  • 玄米の千粒重は「きぬむすめ」より2g程度重く、外観品質は「きぬむすめ」並で「日本晴」より優れる。高温登熟耐性は「きぬむすめ」よりわずかに強く"やや強"である(表1)。
  • 白米のアミロース含有率と玄米の蛋白質含有率は「きぬむすめ」と同程度である。炊飯米の食味は「日本晴」より優れ、「きぬむすめ」に近い良食味である。炊飯米の硬さは「きぬむすめ」より硬く、「日本晴」並である(表1、図1)。

成果の活用面・留意点

  • いもち耐病性が不十分で、縞葉枯病に罹病性であるため、常発地での栽培は避ける。
  • 暖地および温暖地向き、主食米用・業務米用として普及予定(約100ha)である。

具体的データ

表1 「西海291号」の主要特性;表2 「西海291号」の耐病虫性;図1 「西海291号」の物理特性

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(業務・加工用)
  • 研究期間:2005~2017年度
  • 研究担当者:竹内善信、田村克徳、片岡知守、中西愛、佐藤宏之、田村泰章、坂井真、梶亮太
  • 発表論文等:竹内ら「西海291号」品種登録出願第32990号(2018年3月30日)