直播栽培適性が高い焼酎用カンショ新品種「スズコガネ」

要約

カンショ「スズコガネ」は種小いもを圃場に直接植え付ける省力的な直播栽培に適しており、貯蔵性に優れ、線虫抵抗性を備える。焼酎製造時の純アルコール収得量は「コガネセンガン」と同等以上であり、焼酎の官能評価も優れる。

  • キーワード:カンショ、直播栽培、焼酎用、貯蔵性、線虫抵抗性
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域・サツマイモ育種グループ
  • 代表連絡先:電話0986-24-4270
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

通常、カンショ生産は種いもを苗床に伏せ込み、育苗した苗を圃場に植え付ける挿苗栽培で行うが、収穫作業の機械化が進むのに対して、種いも伏せ込みから挿苗までの作業は機械化がほとんど進んでいないのが現状である。2015年の10aあたり労働時間はでん粉用カンショが59.2時間で、同用途のバレイショの8.5時間と比較し格段に多い。大規模化、生産法人化が急速に進むカンショ産地では、省力化技術の開発が喫緊の課題であり、その一手法として種小いもを直接圃場に植え付ける直播栽培が挙げられる。しかし、これまでのカンショ品種では植え付けた種いもが再肥大しやすく、子いも収量の減少や再肥大した種いも(親いも)による収穫物の品質劣化を招くなどの問題が生じる。そこで、育成地では、直播栽培時の種いもの再肥大程度が小さく、用途適性にも優れる品種の育成を進めてきた。

成果の内容・特徴

  • 「スズコガネ」は、焼酎醸造適性の高い「コガネセンガン」を母、直播栽培適性の高い「中国25号」を父とする交配組合せから得られた品種である。
  • いもの形状は球形~下膨れ短紡錘形(UPOV基準では楕円形)で、大きさはやや小さく、皮色はいもの両端に紅色を帯びた淡黄白色である。いもの条溝はやや多く、「コガネセンガン」と同等であるが、萌芽性は"やや良"、貯蔵性は"易"で、いずれも「コガネセンガン」より優れる(表1、図1)。
  • 育成地における収量は直播栽培の「ムラサキマサリ」および「シロユタカ」より多く、種いも再肥大の指標となる親いも重率は最も低い(表2)。
  • 焼酎醸造時の純アルコール収量は、ミニプラント試験で「コガネセンガン」と同等であり、実機試験では「コガネセンガン」を上回る。官能評価ではいずれも「コガネセンガン」を上回り、甘い香りや甘味に特徴がある(表3)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は"強"、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性は"やや強"で、いずれも「コガネセンガン」より優れる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 主に直播栽培により焼酎原料として活用される。
  • 育成地における収量は挿苗栽培の「コガネセンガン」より少ない。
  • 黒斑病抵抗性が"やや弱"なので、本病害の多発地帯では健全な種いもの利用と適切な防除に努める必要がある。
  • 直播栽培を行う際は、健全な種小いもの確保と生育初期の雑草防除に努める必要がある。

具体的データ

図1 「スズコガネ」の塊根

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「先導プロ」)
  • 研究期間:2004~2016年度
  • 研究担当者:境哲文、高畑康浩、甲斐由美、小林晃、吉永優、片山健二、藤田敏郎、岩井謙一(霧島酒造)、藤田剛嗣(霧島酒造)、宮川光世子(霧島酒造)、河野邦晃(霧島酒造)、小境敏輝(霧島酒造)、伊川秀治(霧島酒造)
  • 発表論文等:境ら「スズコガネ」品種登録出願第31272号(2016年9月29日)