特徴的な香味を有する焼酎の原料用橙肉カンショ新品種「サツマアカネ」

要約

カンショ「サツマアカネ」は、塊根にβ-カロテンを含有する焼酎原料用の橙肉カンショ品種である。口当たりが良い、フルーティーな柑橘系の香味がする個性的な焼酎を製造することができ、橙肉品種としてはでん粉歩留まりが高く、醸造適性が優れる。

  • キーワード:カンショ、β-カロテン、橙肉、焼酎、柑橘香
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域・サツマイモ育種グループ
  • 代表連絡先:電話0986-24-4270
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

焼酎用カンショの主力品種である「コガネセンガン」の焼酎は、その風味や独特の甘味といった酒質が高く評価されている。その一方で、焼酎の香味に対する多様な消費者ニーズに対応し焼酎需要を維持・確保する観点から、「コガネセンガン」とは異なる酒質を備えた焼酎製品の開発も求められている。β-カロテンを含有する橙肉品種「タマアカネ」は、フルーティーな熱帯果実的な香りが付与される個性的な焼酎の原料として、焼酎需要の拡大に貢献しているが、でん粉歩留まりが低いため、純アルコール収量が低く、製造コストが高いといった欠点があった。そこで、β-カロテンを含有し、醸造適性の高い橙肉品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「サツマアカネ」はでん粉歩留まりの高い「スターチクイン」を母、高カロテンの「ハマコマチ」を父とする交配集団から選抜した品種である。
  • いもは卵形で、「タマアカネ」同様、β-カロテンが含まれ、橙肉色を有している。皮は赤く、条溝と裂開が発生することもあるが、外観は"やや上"である(表1、図1)。
  • 「タマアカネ」と比べていもの収量はやや劣るが、標準無マルチ栽培および長期透明マルチ栽培ではでん粉歩留まりが「タマアカネ」よりも4ポイントほど高いため、でん粉収量は「タマアカネ」よりも多い(表2)。
  • 焼酎醸造時の純アルコール収量が「タマアカネ」よりも高い。官能評価では「タマアカネ」を上回り、甘味や口当たりの良さ、フルーティーな柑橘系の香りを特徴とする(表3)。
  • ネコブセンチュウ抵抗性は"強"で、ネグサレセンチュウ抵抗性、黒斑病抵抗性、つる割病病抵抗性はいずれも"やや強"である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 焼酎原料としての活用を予定している(当面の普及見込み面積20ha)。
  • 立枯病抵抗性が"やや弱"なので、本病害の多発圃場での栽培は避ける。

具体的データ

図1 「サツマアカネ」の塊根

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(資金提供型共同研究)
  • 研究期間:1994~1998、2011~2017年度
  • 研究担当者:小林晃、境哲文、甲斐由美、境垣内岳雄、末松恵祐、高畑康浩、藤田敏郎、吉永優、山川理、熊谷亨、石黒浩二、竹迫寿一(薩摩酒造)、小峯修一(薩摩酒造)
  • 発表論文等:小林ら「サツマアカネ」品種登録出願第33181号(2018年6月13日)