耐病性と耐倒伏性に優れる飼料用サトウキビ新品種候補「KY09-6092」
要約
飼料用サトウキビ系統「KY09-6092」は黒穂病をはじめさび病などの耐病性に優れた系統である。「KRFo93-1」や「しまのうしえ」に比べ株出し収量は同程度で耐倒伏性に優れている。
- キーワード:飼料用サトウキビ、病害抵抗性、耐倒伏性
- 担当:九州沖縄農業研究センター・作物開発利用研究領域・さとうきび育種グループ
- 代表連絡先:電話0997-25-0100
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
全国の子牛セリ頭数の約15%を占める南西諸島の畜産経営の問題点として、島であり畑の面積が少なく、また台風や干ばつなどが頻繁に襲来するため粗飼料の増産が容易でないことがあげられる。粗飼料増産に向けて既存の飼料作物ローズグラスより多収となる飼料用サトウキビ品種として、鹿児島県熊毛地域向けには「KRFo93-1」鹿児島県奄美地域および沖縄県向けには「しまのうしえ」を育成し、普及が進められている。
一方で「KRFo93-1」は多回株出し圃場でのさび病類の多発が認められる。また、「しまのうしえ」は収穫時期が遅れた際の倒伏が著しいことが問題となっている。さらに両品種とも最重要病害である黒穂病への抵抗性を高めることが求められていた。そのため、黒穂病等の病害抵抗性に優れ、さらに耐病性・耐倒伏性に優れた新品種を開発した。
成果の内容・特徴
- 「KY09-6092」は、製糖用品種「NiF8」を種子親、黒穂病抵抗性に優れる国内自生野生種「西表8」を花粉親とする。
- 「KY09-6092」は、黒穂病抵抗性が"極強"である(表1)。また、サトウキビ主要病害に対する抵抗性が高く、さび病・モザイク病抵抗性は"強"である(表1)。
- 「KY09-6092」は育成地の種子島において「KRFo93-1」よりも特に多回株出し栽培において高い乾物収量と可消化乾物収量が得られる(図1、表2)。
- 「KY09-6092」は収穫時の草姿は直立であり(図2)、「しまのうしえ」と比較して耐倒伏性に優れている(表1)。そのため機械収穫による作業適性が高い。
成果の活用面・留意点
- 南西諸島全域において活用を想定しているが、特に鹿児島県奄美地域および沖縄県においては「しまのうしえ」に比べ耐倒伏性に優れることから、機械収穫を前提とした畜産経営農家、飼料生産組織等を中心に活用できる(作付け見込面積50ha)。
- 新植時の初期生育が既存品種に比べやや劣るので、雑草害に留意する。
- 飼料用他2品種との識別形質として葉鞘の毛群が多いことが特徴である。そのため手刈り作業には向かない。
- 「KY09-6092」の乾物収量は沖縄県では「しまのうしえ」に比べ劣る場合がある。
- 糖度が低く、繊維分が多いため、製糖用としては利用できない。
- 飼料用サトウキビは沖縄ではケーングラスとも呼称する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、その他外部資金(オンデマンド)
- 研究期間:2008~2017年度
- 研究担当者:早野美智子、境垣内岳雄、服部太一朗、寺内方克、樽本祐助、服部育男、田中穣、安達克樹、石川葉子、寺島義文、松岡誠、梅田周
- 発表論文等:早野ら「KY09-6092」品種登録出願第33006号(2018年4月6日)