紫斑点病抵抗性の早生スーダン型ソルガム系統「ナツサカエ」
要約
「ナツサカエ」は早生のスーダン型ソルガムで紫斑点病抵抗性である。暖地では4月下旬から5月中旬播種で「峰風」より年間乾物収量が高く、また、イタリアンライグラスの9月下旬播種前に2番草を収穫ができる。
- キーワード:ソルガム、紫斑点病、早生、飼料作物育種、一代雑種
- 担当:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域・飼料作物育種グループ
- 代表連絡先:電話0287-37-7000
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
暖地では、ソルガムで紫斑点病の発病が甚だしい場合、収量および品質の低下するために紫斑点病抵抗性の付与は必要である。ソルガムは、冬作のイタリアンライグラスとの組合せで利用されている。近年、イタリアンライグラスで9月下旬に播種できるいもち病抵抗性品種(Kyushu 1、ヤヨイワセ、はやまき18)が育成されている。そこで、イタリアンライグラスの9月下旬播種までに2番草を収穫できる紫斑点病抵抗性(ds1)を併せ持つ早生のスーダン型ソルガム品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「ナツサカエ」は子実型ソルガムの細胞質雄性不稔系統「JNK-MS-7A」を種子親とし、スーダングラス自殖系統「JNK-2」を花粉親とするスーダン型の単交雑一代雑種である。
- 「ナツサカエ」は、早生品種「峰風」より約4日早く出穂し、早生に属する(表1)。熊本では5月10日前後の播種で1番草は7月10日に出穂期に達し、その頃に収穫することで2番草は8月下旬に出穂する。
- 九州および沖縄地域での年間乾物収量は、それぞれ、「峰風」対比106%および109%である(表1)。熊本では、4月下旬から5月中旬までに播種することで「峰風」より年間乾物収量が1割増の多収で、「KS-2」より明らかに多収である(図3)。
- 1番草の乾物率は「峰風」および「KS-2」より高い(表1)。
- 紫斑点病抵抗性遺伝子(ds1)を有しているため、紫斑点病の大きな病斑は認められず、抵抗性は「強」である(表1、図1)。
- 自然発生におけるすす紋病罹病程度は、「峰風」と同程度で「KS-2」より低い(図2)。
- 1番草および2番草の推定TDN含量は「峰風」並である(表1)。
- 初期生育は「峰風」並である。草丈は「峰風」より低い。稈径は「峰風」より小さい。茎数は「峰風」より多い(表1)。
- 倒伏割合は「峰風」並である。
成果の活用面・留意点
- 栽培適地は九州および沖縄地域である。熊本では5月中旬までの播種でイタリアンライグラス播種期の9月下旬までに出穂期刈りで2回収穫できる。
- 各地における慣行の播種時期で播種する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
- 研究期間:2011~2017年度
- 研究担当者:高井智之、我有満、桂真昭、山下浩、上床修弘、荒川明、波多野哲也、松岡誠、木村貴志
- 発表論文等:高井ら「ナツサカエ」品種登録出願第33171号(2018年6月11日)