紫斑点病抵抗性のソルガム細胞質雄性不稔系統「JNK-MS-7A」および維持系統「JNK-MS-7B」

要約

「JNK-MS-7A」および「JNK-MS-7B」は、それぞれ、早生の細胞質雄性不稔系統および維持系統である。紫斑点病抵抗性遺伝子(ds1)を持ち、一代雑種品種「ナツサカエ」の種子親系統として利用できる。

  • キーワード:ソルガム、細胞質雄性不稔系統、維持系統、紫斑点病抵抗性、飼料作物育種
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域・飼料作物育種グループ
  • 代表連絡先:電話0287-37-7000
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ソルガムの栽培品種は、細胞質雄性不稔系統を種子親とし、自殖系統を花粉親とする一代雑種(F1)が主流であり、優良F1品種の育成には優秀な親系統が不可欠である。ソルガムでは、一代雑種の諸特性が優れる細胞質雄性不稔系統および維持系統の育成を行っており、その一環として紫斑点病抵抗性遺伝子を持つ種子親系統を育成する。

成果の内容・特徴

  • 維持系統「JNK-MS-7B」は、高消化性品種「葉月」等の種子親である「那系MS-3B」にスーダングラス自殖系統「Greenleaf」を交配して、選抜・自殖を繰り返して育成した(図1)。細胞質雄性不稔系統「JNK-MS-7A」は「那系MS-3A」に「JNK-MS-7B」を連続戻し交配して育成した。
  • 初期草丈は、「那系MS-3A/B」および「JNK-MS-6A/B」より高い(表1)。
  • 出穂期は、早生の「那系MS-3A」および「那系MS-3B」とほぼ同一日である。早晩性は"早生"に属する。稈長は約1.4mの"子実型"、穂長は24cm前後、稈径は約12.5mm、茎は"汁性"である(表1)。
  • 紫斑点病抵抗性は"強"で、大きな病斑は認められない(表1、図2)。
  • 本系統を種子親とする「ナツサカエ」は早生のスーダン型ソルガムで、出穂期刈り収穫における1番草および2番草の乾物収量は、それぞれ、「峰風」比で110%および120%と多収で、年間乾物収量は1580kg/10aである(表2)。「ナツサカエ」の紫斑点病抵抗性は"強"で、大きな病斑は認められない。

成果の活用面・留意点

  • スーダン型ソルガム一代雑種「ナツサカエ」の種子親として利用できる。
  • 紫斑点病抵抗性を有しているため、新たな一代雑種の種子親系統として利用できる。
  • 慣行の播種時期で播種する。

具体的データ

図1 「JNK-MS-7A」(ポールの左側)および「JNK-MS-7B」(ポールの右側)の草姿(九州沖縄農研、2015年8月6日撮影);図2 幼苗接種試験における紫斑点病罹病程度(供試菌株:BC3)(九州沖縄農研);

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1996~2017年度
  • 研究担当者:高井智之、我有満、桂真昭、山下浩、上床修弘、波多野哲也、松岡誠、荒川明、木村貴志、松岡秀道、春日重光(長野畜試)、原拓夫(長野畜試)、海内裕和(長野畜試)、後藤和美(長野畜試)、宮坂幸弘(長野畜試)
  • 発表論文等:
  • 1)高井ら「JNK-MS-7A」品種登録出願第33174号(2018年6月11日)
    2)高井ら「JNK-MS-7B」品種登録出願第33175号(2018年6月11日)