サツマイモネコブセンチュウの増殖を抑制するstrigosaエンバク「テララ」

要約

「テララ」は、キタネグサレセンチュウの密度低減効果を持つとともに、サツマイモネコブセンチュウの増殖を抑制する。暖地では、9月上旬播種で年内に出穂し、出穂程度は夏播き用極早生エンバク品種と同程度である。

  • キーワード:エンバク、キタネグサレセンチュウ、サツマイモネコブセンチュウ、緑肥、飼料作物育種
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域・飼料作物育種グループ
  • 代表連絡先:電話0287-37-7000
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

エンバクは、飼肥料作物として全国で51,600ha(2016年)で栽培されており、エンバク野生種と称されているstrigosaエンバク(Avena strigosa Schreb.、セイヨウチャヒキ)がキタネグサレセンチュウの対抗植物として利用されているが、暖地における主要な有害線虫であるサツマイモネコブセンチュウを抑制する既存品種はなく、2種の線虫を抑制する品種が望まれている。
そこで、本課題は暖地において線虫対策と自給飼料生産を同時に対応できるように、サツマイモネコブセンチュウを抑制し、夏播き栽培で年内に出穂するstrigosaエンバク品種を育成し、暖地の耕畜連携に貢献することを目指すものである。

成果の内容・特徴

  • 「テララ」は、strigosaエンバク導入品種から九州の夏播き栽培において年内に出穂する個体に由来し、年内出穂とサツマイモネコブセンチュウの増殖抑制について選抜を進めた品種である。
  • キタネグサレセンチュウ密度低下率は「リッキー」や「サイアー」と同程度で、無播種と比較して大きく低下しており(表1)、「テララ」の栽培はキタネグサレセンチュウ密度を積極的に低減させる効果がある。
  • サツマイモネコブセンチュウに対しては、strigosaエンバク既存品種の根には多くの卵のうが形成されるが、「テララ」はサツマイモネコブセンチュウ抑制効果が確認されているエンバク「スナイパー」と同程度の卵のう数であり(表2)、圃場試験でも同様な抑制効果を示す(表3)。
  • 熊本で9月上旬に播種した場合、年内に出穂し、出穂程度は「リッキー」と同程度で、「サイアー」より大きく、夏播き用極早生エンバク(Avena sativa L.)品種の「ウエスト」と同程度である(表4)。
  • 熊本での乾物収量は、「リッキー」と同程度で、「ウエスト」よりやや低く、耐倒伏性、耐病性、推定TDN含量、粗タンパク質含量は「リッキー」と同程度である(表4)。

成果の活用面・留意点

  • 各地域における、それぞれの用途に応じた慣行の栽培管理で利用できる。南九州においては、カンショ後作の夏播き栽培(9月播種)での利用について検討中である。
  • 近年、strigosaエンバクでセイヨウチャヒキいもち病、褐斑細菌病といった新しい病害が報告されているので、地域の指導情報に留意する。

具体的データ

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2004~2016年度
  • 研究担当者:桂真昭、上杉謙太、我有満、上床修弘、高井智之、立石靖、山下浩、松岡誠、松岡秀道、荒川明、波多野哲也、村田岳、後藤和美、木村貴志、岩渕慶(ホクレン)、安達美江子(ホクレン)、道場和也(ホクレン)
  • 発表論文等:
    1)桂ら「テララ」品種登録出願第32206号(2017年6月12日)
    2)上杉ら(2018)九病虫研会報、印刷中