省力的な栽培が可能で、大果で日持ち性に優れた多収性イチゴ品種「恋みのり」

要約

イチゴ「恋みのり」は連続出蕾性に優れた大果、多収性の促成栽培向け品種である。摘果作業の必要性が少ない適度な果房当り果数を有し、果実の揃いがよく、栽培管理および収穫・調製作業の省力化が可能である。日持ち性に優れ、輸出にも適する。

  • キーワード:イチゴ、多収性、大果、省力化、日持ち性
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・園芸研究領域・イチゴ育種グループ
  • 代表連絡先:電話0942-43-8362
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年のイチゴ栽培においては、1ha規模の高収益経営を目指した次世代型の生産システムの構築が進められている。そこで、冬期の草勢が強く草勢維持がしやすく、連続出蕾性に優れ、収穫ピークの平準化が可能で収量性が高いこと、さらに日持ち性に優れ、大果で秀品率が高く、収穫・調製作業の省力化が可能な品種の開発が求められている。本研究では、これら特性を有した促成栽培用品種を育成・普及する。

成果の内容・特徴

  • イチゴ「恋みのり」は、連続出蕾性に優れ、大果で収量性が高い促成栽培向け品種である(図1左、中央、表2)。
  • 冷蔵コンテナを用いた香港への船便輸送において、「恋みのり」は主要品種Aと比較して果実の損傷面積割合が1/3~1/5と有意に少なく、日持ち性に優れる。さらに、輸送に際し、輸出に対応した宙吊り容器(図1右)とMA包装を活用することにより、従来の平詰めトレーと比較して、果実の損傷面積割合が1/2~1/4と有意に軽減できる(図2)。
  • 冬期の草勢が強く草勢維持がしやすく、果房伸長性に優れ、果実肥大が優れ果房当たり果数が10果程度であるため、摘果等の管理作業が軽減できる(図1左)。また、大果で果実の揃いに優れ秀品率が高いことから、収穫・調製作業が軽減でき、主要品種Bと比較して本圃管理作業で約4割、収穫作業で約2割、調製作業で約3割の省力化が可能である(表1)。
  • 高単価が期待できる平詰めトレーの割合が高いことから、市場価格は主要品種と比較してやや高い価格で取引されている(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:イチゴ生産者、消費者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:2018年12月末の利用許諾件数20件、推定普及面積は熊本県および長崎県を中心に約50haであり、5年後には全国の促成栽培産地を中心に約200haまで増加すると推定される。
  • 「恋みのり」の種苗は、民間事業者から販売されている。栽培管理では、萎黄病および炭疽病に対しては罹病性であるため、健全な親株から増殖するとともに、育苗期は予防に努める。うどんこ病に対する抵抗性は中程度で発病が認められるため、通常の防除管理を行う。また、連続出蕾性が強いため芽なし株が発生しやすいので、育苗から本圃定植後の栽培期間を含め、十分な草勢の確保ならびに肥効の維持に留意する。
  • 生産者からは、大果で収量性が高く、収穫・調製作業を含む栽培管理作業の省力化が可能であること、市場関係者からは、日持ち性に優れ、輸出にも適することが評価されている。

具体的データ

図1 着果状況、果実、販売形態,図2 香港への冷蔵コンテナ海上輸送後における果実の損傷面積割合,表1 促成栽培における省力効果,表2 「恋みのり」の収益性

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2015年度
  • 研究担当者:曽根一純、遠藤(飛川)みのり、沖村誠、北谷恵美、木村貴志、藤田敏郞
  • 発表論文等:曽根ら「恋みのり」品種登録出願公表31470号(2017年1月30日)