逆転ロータリとサイドディスクを活用した大豆の畝立て一工程浅耕播種技術

要約

逆転ロータリの爪配列を平高畝仕様に変更し、前方にサイドディスクを取り付け、畝立て、排水溝の作成、前作麦稈のすき込み、大豆の浅耕播種を一工程で実施できる技術である。浅耕により排水性を確保しながら所要動力を4割程度削減することができる。

  • キーワード:大豆、サイドディスク、逆転ロータリ、一工程浅耕播種
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・水田作研究領域・水田栽培グループ
  • 代表連絡先:電話092-242-7682
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

北部九州における大豆の慣行栽培方法では、6月上旬に麦類を収穫した後に麦稈をすき込むため梅雨の合間に事前耕起を行い、梅雨の合間または梅雨明け後の7月中旬頃に再度耕起しながら同時播種することが多い。事前耕起をした圃場は保水力が高くなるため、降雨があると圃場が乾きにくく播種作業が遅れる一要因となっている。慣行栽培体系で使用される正転ロータリを、逆転ロータリに変更することで、事前耕起が不要となり、一工程で麦稈のすき込み、耕起、大豆播種を同時に行うことができる。しかしながら、逆転ロータリは所要動力が大きく作業速度が遅いという欠点があり、普及の阻害要因となっている。現行の逆転ロータリで浅耕をすると、所要動力こそ軽減するが、砕土や播種床形成が不安定で排水を促す排水溝の形成も不十分になる。そこで、排水性を高めながら逆転ロータリの従来の作業性能を維持しつつ、所要動力を軽減させる浅耕耕播種技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 両側3本の爪配列を内側に向けた平高畝仕様の逆転ロータリに改良を加え、前方にサイドディスクをロータリの耕深より5cm程度低い位置に取り付けるトラクタ装着式の作業機で、後方に目皿式などの播種機を取り付けて大豆を播種する(図1)。サイドディスクからの土の供給により浅く耕起しても安定した播種床が形成される。また、サイド板と地表面の間に空間ができるため、麦稈が多い圃場でも麦稈の詰まりが少ない(図省略)。
  • 慣行の畝立て播種による耕深が15cmの場合、畝高さは10cmであるが、浅耕播種時には耕深10cmで同じ畝高さが得られ、浅耕播種であっても慣行の畝立て播種と同様に90%程度の砕土率が確保できる(図2)。浅耕播種であっても慣行の畝立て播種と同様の畝ができるため、畝の形状に大きな差はないが、浅耕播種ではサイドディスクにより不耕起層にも排水溝が形成されるため、排水性が確保できる。
  • 耕うんに30kWのトラクタを使用する際、作業速度の増加にともない所要動力は増加する(図3)。しかし、慣行耕深に比べ浅耕の所要動力は少なく、3km/h以上の作業速度の場合、所要動力は慣行耕深より約4割小さくなる。

成果の活用面・留意点

  • 30kWクラスのトラクタを用いた梅雨中、梅雨直後でも大豆の播種作業に利用できる。
  • 浅耕播種した際の作業速度と収量との関係性の解明と実証には至っていない。
  • 砕土率は約3kgの作土(土性:壌土)のうち2cmのふるいを通過した割合である。
  • 所要動力は30kWのトラクタを使用し、土壌含水率が約27%の壌土で測定した場合の結果である。

具体的データ

図1 改良前(左)と改良後(右)の逆転ロータリ,図2 逆転ロータリの平高畝耕による慣行耕深(左)および浅耕(右)で播種した直後の畝断面図,図3 逆転ロータリの平高畝耕による慣行耕深(左)および浅耕(右)が所要動力におよぼす影響

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2015~2018年度
  • 研究担当者:松尾直樹、土屋史紀、深見公一郎、中野恵子、高橋仁康
  • 発表論文等:松尾ら、特願(2018年2月23日)