苗の小型化により育苗・植付作業を省力化する原料用かんしょの機械化一貫体系

要約

小型化した苗を用いた原料用かんしょの苗床造成から本圃植付けまでの機械化一貫体系により、育苗・植付作業時間は慣行体系と比べて約50%の削減ができ、作業姿勢が改善される。平均収量は慣行栽培並みであり、10a当たり全算入生産費は約6%削減される。

  • キーワード:かんしょ、育苗、植付け、省力化、軽労化
  • 担当:九州沖縄研究センター・畑作研究領域・畑機械・栽培研究グループ
  • 代表連絡先:電話0986-24-4276
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

原料用かんしょ栽培の育苗・植付作業は人力主体で機械化が進まず、その作業時間は全作業時間の約半分を占めている。慣行苗用植付機は市販されているが、育苗作業の省力化は取り残されている。
そこで、本研究では茎長15cmの短い苗(以下、小苗)により一斉採苗の機械化と半自動野菜移植機の利用を核とした機械化一貫体系を構築し、育苗と植付けの作業姿勢の改善による軽労化と作業時間の削減による省力化および低コスト化を目指す。

成果の内容・特徴

  • 本機械化一貫体系では、小苗生産を対象とし、育苗及び本圃植付作業に関して苗床造成機、穴あけ機、一斉採苗機、苗調製機および小苗用移植機を導入し、本圃管理作業や収穫作業は慣行に準じる(図1)。
  • 苗床造成は、苗床造成機を用いて苗床(畦幅1m)を立てながら苗倒伏防止用の波板を苗床周りに設置する(3~5人作業)。伏せ込みは、穴あけ機を用いて畦幅方向に16cm間隔に下穴6個(種いも数27個/m2)を同時に開け、種いもを垂直に伏せ込む(2人作業)。採苗は20日間隔で行い、一斉採苗機を用いて苗の地上部約5cmを残し一斉に切り(2人作業)、苗回収は人力で行う。苗の調製・選別は、苗調製機を用いて茎長15cm以上の苗を15cmに調整し、茎長15cm未満7cm以上の苗は再育苗用に選別する(2人作業)。本圃植付用の小苗はまっすぐに束ね筒で保持し、苗の切り口から深さ5cmに湛水し、約3日間で発根を促す。再育苗用苗はセルトレイ(72穴)に挿し、養液育苗により20日間再育苗し小苗として採苗する。本圃植付けは、小苗用移植機を用いて行う(1人作業)(図1)。
  • 機械化一貫体系による育苗と植付けの作業時間は9.1時間/10aとなり、慣行栽培18.4時間の50%減、10a当たり全算入生産費は約6%(栽培面積8.5ha時)削減できる(図2)。
  • 小苗関連機械を導入した作業工程は、負担が大きい姿勢による作業時間が短くなり、作業時間に占める割合も低くなる(図3)。
  • 小苗栽培では、1株重の生育は遅れ気味となるが、苗生産性向上(慣行苗の1.5倍以上)により密植や植付時期の前倒しによる在圃日数の拡大が可能となり、4~5月に3回植付けた場合、平均収量は慣行栽培並み収量(「コガネセンガン」3.0t/10a、「シロユタカ」3.5t/10a)が得られる(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • 労働力不足に悩む原料用かんしょ生産者向けの情報として寄与でき、鹿児島県で小苗用栽培指針を作成中である。なお、本情報に供試した品種は「コガネセンガン」、「シロユタカ」である。
  • 小苗用移植機は直立植えしかできないため、外観を重視する生食用かんしょには向かない。
  • 苗床造成機、穴あけ機、一斉採苗機、苗調製機は商品化されているが、小苗用移植機は試作段階である。

具体的データ

図1 小苗栽培の育苗・植付機械化一貫体系のフローチャート,図2 小苗体系と慣行体系の作業時間と生産費の比較(2011~2018年の研究の現地実証試験結果に基づく),図3 小苗作業体系と慣行作業体系の作業姿勢の比較(OWASによる)

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(26補正「革新的緊急展開」、27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2011~2018年度
  • 研究担当者:杉本光穗、小林透、森江昌史、渡辺輝夫、松尾健太郎、鎌田えりか、大村幸次(鹿児島県農開セ大隅)、溜池雄志(鹿児島県農開セ大隅)、竹牟禮穣(鹿児島県農開セ大隅)、森清文(鹿児島県農開セ大隅)、山科一雄(藤木農機製作所)、西牟田昭人(松元機工)、村並昌実(井関農機(株))、大久保嘉彦(井関農機(株))
  • 発表論文等:杉本ら「苗移植機」特許第6256945号(2017年12月15日)