牛枝肉への3週間の乾燥熟成処理は歩留を下げるが肉質を改善する

要約

枝肉庫内で約3週間の乾燥熟成処理を行うと、脱水により枝肉重量は約1%減少し、部分肉重量は約9%減少するが、硬さの低下や旨味の増加など肉質が改善される。

  • キーワード:枝肉熟成、歩留、肉質、肉用牛
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域・肉用牛生産グループ
  • 代表連絡先:096-242-7543
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、枝肉に対して「枯らし」や「吊るし」といった呼称で、脱水と熟成による処理(枝肉熟成と略す)を行う事例がある。屠畜後の部分肉に対する熟成処理は硬さや味の改善などの効果が期待されるために、冷蔵熟成、氷温熟成や乾燥熟成(通称:ドライエージング)などの様々な熟成方法が行われている。しかし、枝肉に熟成処理を行い歩留や肉質の変化を検討した報告は見られない。
そこで、本研究では枝肉の状態で熟成処理を行い、歩留や肉質に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 屠畜された褐毛和種去勢雄牛4頭(出荷時月齢と平均体重:28~31ヵ月齢、640kg)の枝肉を枝肉庫[約10m(縦)×5m(横)×3m(高さ)]へ搬入して約3週間(18日間)の熟成処理(枝肉は剥き出しの状態;温度0°C;工業扇による強風設定)を行うと、脱水により枝肉重量は約1%減少し、部分肉への分割後は重量が約9%減少(脱水量込み)する(表1)。
  • 部分肉16部位の歩留減少は一定ではなく部位によって異なり、歩留100%は'かた'と'しんたま'、同90%以上は'かたロース'、'かたばら'、'三角ばら'、'サーロイン'、'ヒレ'、'うちもも'と'そともも'、同80%以上は'うちばら'、'リブロース'と'すね'、同70%以上は'ネック'、'とうがらし'と'そとばら'である。
  • リブロース(胸最長筋)の肉質は、枝肉熟成前に比べて熟成後で、肉の硬さの指標である破断強度が有意に低下し、肉の旨味の指標である遊離アミノ酸総量が有意に増加する。pHおよび一般生菌数はほとんど変化しない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 枝肉への熟成処理技術を開発するための基礎的知見となる。
  • 熟成期間(歩留の低下と肉質改善効果との折り合い)は品種、出荷時月齢や枝肉重量などで変化する可能性がある。

具体的データ

表1 枝肉熟成による歩留の変化,表2 枝肉熟成によるリブロースの肉質の変化

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:中村好德、金子真、小林良次
  • 発表論文等:中村ら(2018)日本暖地畜産学会報、61(1):3-9