腟温センサーに基づく肉用牛の分娩経過時間は分娩難易度の影響を受ける
要約
市販されている分娩監視用腟温測定センサーで分娩前体温を測定した場合、分娩難易に従い一時破水から娩出までの時間は延長する。そのため破水後の経過時間で要介助~難産の判断ができる可能性が高い。
- キーワード:体温測定、分娩監視、分娩難易度、産子体重
- 担当:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域・肉用牛生産グループ
- 代表連絡先:電話096-242-7543
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
牛の分娩監視は昼夜問わず必要であるため、農家の負担となっている。さらに、分娩時の難産や死産は農家経営に直接影響を与えるため、その低減は安定的畜産経営に重要である。既に、分娩監視の省力化並びに分娩事故低減のために腟温度センサーを用いた分娩監視システムが実用化されており、市販品の利用が可能である。
そこで、本研究では近年大型化が進む企業的肉用牛繁殖経営農場にて、市販の腟温測定式分娩監視システムを導入し、分娩経過時間と難易度の関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 500頭の黒毛和種繁殖メス牛を繫養する農場にて分娩監視用腟温センサーを導入し、温度閾値を0.4°Cに設定して分娩監視を行った場合、体温低下警報から一次破水、一次破水から娩出までの検出率、経過時間はそれぞれ、88.3%、99.4%、約22時間、2時間である(図1、表1)。
- 分娩難易度を自然分娩、介助(1人)、難産(2人以上+獣医)の3段階に分類した場合、妊娠期間に差はないが、産子体重は難易度依存的に増加し、その雌雄比も難易度が高いほど雄率が高くなる(表2)。
- 分娩前の一次破水~娩出までの時間は、分娩難易度依存的に延長する(図2)。
- 一次破水~娩出までの時間は、分娩難易度、産子体重の影響を受ける。なお、産子体重は雄が大きい結果、介助~難産では雄の比率が高くなる。
成果の活用面・留意点
- 分娩監視システムには、株式会社リモートの牛温恵を用いた。
- 一次破水後2時間以上経過した時点で娩出されていない場合は、要介助である可能性が高いため、何らかの対応を図る必要がある。
- 体温低下警報閾値を変更した場合には、分娩経過時間は異なる可能性が高い。
- 今回実験に供した繁殖牛はすべて経産牛である。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、その他外部資金(26補正「革新的緊急展開」)
- 研究期間:2014~2016年度
- 研究担当者:阪谷美樹、竹之内直樹、法上拓生、菅野崇明(NTTドコモ)、肥後愛貴(きもつき大地ファーム)、月精悟(JAきもつき)
- 発表論文等:Sakatani M. et al.(2018)Theriogenology 111:19-24