苗を用いたサツマイモ立枯病抵抗性室内検定法

要約

サツマイモ苗を用いて室内で簡易に立枯病抵抗性を評価する手法である。本法による抵抗性の評価は、圃場検定による評価結果と一致する。本手法の活用により、多数の品種・系統の立枯病抵抗性を安定して評価できる。

  • キーワード:サツマイモ立枯病、抵抗性、室内検定、苗
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域・畑作物生理・遺伝グループ
  • 代表連絡先:電話0986-24-4274
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

サツマイモ立枯病は深刻な被害をもたらす土壌病害であり、化学農薬を用いた土壌消毒の他に有効な防除技術は確立されておらず、抵抗性品種の育成が望まれている。育成系統の立枯病抵抗性は立枯病汚染圃場で検定されているが、気象条件や圃場の病原菌密度の偏り等の影響を受け、発病が安定しない場合がある。また、汚染圃場の養成は容易ではなく、圃場では適する条件下での試験が年に1度しか行えないことも問題点として挙げられる。そこで本研究では、サツマイモの苗を用いた簡易な抵抗性室内検定法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 立枯病菌を酵母エキス・グルコース培地に接種して振とう培養し(30°C、120rpm、4日間)、遠心分離(10,600×g、5分間)で培地成分を除いた後に1,000倍量の滅菌水に懸濁し(約104生菌数/mL)、接種源として用いる。
  • 50ml遠沈管にサツマイモ苗を挿した後、バーミキュライトを詰め、立枯病菌を接種し、温度制御可能な水槽(水温30±1°C)に設置して約2週間栽培する(図1、表1)。
  • 地下部を洗浄し、茎および根の発病を黒変・腐敗面積に基づいて茎は6段階、根は7段階の発病指数で評価し(図2)、それらの指数を加算した総合発病程度を個体毎に算出し、抵抗性の程度を評価する。
  • 本法による抵抗性の評価は、圃場検定による評価結果と一致する。抵抗性系統「90IDN-47」と「パープルスイートロード」のような感受性品種を標準品種・系統として毎回の検定に組み入れることで、多数の品種・系統の抵抗性を安定して評価できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 立枯病菌懸濁液は、接種源の生菌数を測定しない場合は蒸留水で作製しても良い。
  • 圃場に植え付ける苗に近い長さ(25cm程度)の苗を供試するのが望ましい。苗は、完全展開葉を2~3枚残して下葉を切除し、苗の基部を殺菌剤(糸状菌用)に浸漬し、消毒してから用いる。感受性品種が十分に発病する条件下で検定を行い、抵抗性を評価することが望ましい。
  • 表1に示した灌水量は、水槽を温室(明期27°C/暗期23°C、湿度90%、冬期は照明をつけ16時間日長)に設置して検定を行った時の一例であり、環境に応じて、遠沈管が浮いてくるのを目安に乾燥具合を把握し、適宜灌水する必要がある。
  • 抵抗性室内検定の一連の作業は、毎週、繰り返し行うことが可能である。
  • 本法は、立枯病菌各種分離株の病原性の比較や、立枯病抑制効果のある微生物の選抜にも利用できる。また、立枯病以外の病害の検定にも応用できる。

具体的データ

図1 サツマイモ立枯病抵抗性室内検定の様子,表1 サツマイモ立枯病抵抗性室内検定の作業日程の一例,図2 地下部の茎および根の病徴と発病指数による発病程度の評価,図3 室内検定法を用いたサツマイモ育成系統の立枯病抵抗性評価

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)
  • 研究期間:2014~2018年度
  • 研究担当者:小林有紀、小林晃、高田明子、岡田吉弘、小柳敦史
  • 発表論文等:小林ら(2018)育種学研究、20:23-28