サトウキビ梢頭部の物理的強度を指標とする折損抵抗性の効率的評価手法

要約

生育旺盛期の折損多発部位である生長帯では、物理的強度に品種間差異が認められ、時期や年次によらず一貫した傾向を示す。この物理的強度を梢頭部折損の抵抗性指標とすることで、従来より短期間で定量的な評価が実施でき効率的な選抜が可能となる。

  • キーワード:サトウキビ、折損抵抗性、物理的強度、挫折時モーメント、品種間差異
  • 担当:九州沖縄研究センター・作物開発利用研究領域・さとうきび育種グループ
  • 代表連絡先:電話096-242-7682
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

沖縄、奄美地域における台風接近数の約7割は、サトウキビの生育旺盛期に相当する7~9月に集中し、梢頭部の折損による収量の低下をもたらす。この梢頭部の折損抵抗性には品種間差異が認められており、サトウキビ育種では重要な評価項目のひとつとなっている。しかし、圃場において複数年にわたり台風による折損茎率を調査する従来の評価手法では、台風の規模や発生時期、サトウキビの生育状況など多くの不確定要因に影響を受けるため精度が高いとは言えず、また、判定までに数年間を必要とする。そのため、定量的で再現性があり、短期間でより多くの育成系統を効率的に評価可能な手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 折損抵抗性は茎の物理的強度(挫折時モーメント)で評価できる。計測にあたっては、圃場で生育させた任意の品種系統について、最上位肥厚帯から50~60cm下方に任意の節が位置する茎を採取する。葉身と葉鞘を除去し、デジタルフォースゲージを用いた測定装置に中央部に測定対象とする生長帯が位置するように設置し、同生長帯に対して鉛直方向から一定速度で荷重を与え挫折させ、挫折時のピーク荷重を計測する(図1)。
  • 物理的強度(挫折時モーメント)は以下の式により算出する:
    挫折時モーメント(N mm) = 1/4 × 挫折時最大荷重(N)× 支点間距離(mm)
  • 算出した挫折時モーメントは圃場における風折茎率と負の相関関係を示す(図2)。
  • 各品種系統の挫折時モーメントは生長帯の成熟程度に応じて増減するが、品種系統間の挫折時モーメントの相対的な大小は、異なる時期および年次においても一貫した傾向を示す(図3)。

成果の活用面・留意点

  • サトウキビ育種において、台風や強風に依存せずに生育旺盛期における梢頭部の折損抵抗性の評価指標として利用できることから、再現性があり、効率的な評価・選抜が可能となる。
  • 測定値の品種系統間差異が比較的明確に得られる時期の目安として、仮茎長が1.5m程度に達した時期が挙げられる。
  • 挫折時モーメント測定前に生長帯の短径と長径を測定しておくことで、挫折時モーメントに関係する物理的指標である断面係数と曲げ強度が算出でき、個々の品種の特性をより詳細に検討することができる。
  • 本手法では、サトウキビ生長帯に一定速度で荷重をかけるため、デジタルフォースゲージおよび電動スタンドから構成される測定装置を用いる。

具体的データ

図1 測定方法の概要,図2 圃場での折損率と物理的強度(挫折時モーメント)の関係,図3 2016年の異なる3回の測定時(a)および2015年の9月10日の測定時(b)における各供試品種系統の梢頭部の物理的強度(挫折時モーメント)

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(沖縄振興特別交付金)
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:服部太一朗、樽本祐助、寺内方克、境垣内岳雄、早野美智子、安達克樹、伊禮信(沖縄県農研セ)
  • 発表論文等:
    • Hattori T. et al. (2016) Proceedings of the ISSCT 29:706-709
    • 服部ら(2019)日作紀、88:18-26