沖縄県産パインアップルのカロテノイド含量・組成の品種・系統間差

要約

沖縄県で栽培されたパインアップル18品種または系統の果肉部に含まれる主要なカロテノイドは、ビオラキサンチン、9-cis-ビオラキサンチン、β-カロテンである。18品種・系統はカロテノイド含量の蓄積量により3グループに分けられる。

  • キーワード:パインアップル、カロテノイド、ビオラキサンチン、β-カロテン、品種間差
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・作物開発利用研究領域・作物品質グループ
  • 代表連絡先:電話029-838-8011
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

沖縄県の重要作物であるパインアップルは、缶詰加工用から生食用への転換が進み、生食用の高品質な品種の開発が求められている。色鮮やかな黄色の果肉色が消費者から好まれることから、カロテノイド高含有品種の育成による高品質・高付加価値化が期待される。しかしながら、パインアップルに関して多品種・系統のカロテノイドの特性を詳細に調べた報告はこれまでにほとんどなく、育種に不可欠な基盤的データは十分とはいえない。
そこで本研究では、沖縄県農業研究センター名護支所が保有するパインアップル18品種・系統のカロテノイドを分析し、含量・組成の品種・系統間差について明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • カロテノイド分析に供したパインアップルは、沖縄県農業研究センターが保有する18品種・系統(沖縄県で栽培面積の多い「N67-10」、「ソフトタッチ」、「ボゴール」、「ゴールドバレル」を含む)である(表)。
  • パインアップル果肉に含まれる主要なカロテノイドは、ビオラキサンチン、9-cis-ビオラキサンチン、β-カロテンである(図)。
  • 18品種・系統をカロテノイド含量により分類すると、ビオラキサンチン類とβ-カロテンを多く含み、カロテノイドの総量が1,000mg/100g新鮮重を超える高蓄積タイプ(グループ1)、ビオラキサンチン類とβ-カロテンを中程度に含み、総量が500~1,000mg/100g新鮮重程度の中蓄積タイプ(グループ2)、総量が500mg/100g新鮮重よりも少ない低蓄積タイプ(グループ3)に分けられる。
  • カロテノイド蓄積量による分類は、果肉色の達観評価(白、帯黄白、黄白、淡黄、黄、濃黄の6段階)の分類とよく一致する。

成果の活用面・留意点

  • 沖縄県における高カロテノイド含量のパインアップル育種に活用できる。
  • カロテノイドの分析は、有機溶媒(エタノール、ジエチルエーテル/メタノール混液)で抽出し、ケン化した後ジエチルエーテル層を乾固し、移動層に再溶解してHPLCで定量する方法による。
  • 気象条件等の影響によりカロテノイドの含量は変動する。

具体的データ

表 カロテノイド分析に供したパインアップル品種・系統の概要,図 パインアップルの果肉に含まれるカロテノイドの品種・系統間差

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(受託試験)
  • 研究期間:2013~2018年度
  • 研究担当者:菅原晃美、西場洋一、竹内誠人(沖縄県農業研究センター)
  • 発表論文等:菅原ら(2019)日本食品科学工学会誌、66(3):100-107