ソバ栽培導入時における空間階層性に着目した栽培適地の判別手法

要約

GISを活用しながら空間的階層性に着目し主に湿害の発生に関わる要因を整理する。空間階層性に着目した要因解析により、対象地区ではソバ栽培導入時において地形条件からソバの栽培適地と不適地を判別することができる。

  • キーワード:湿害、地形、GIS、土地分級、計画手法
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域・畑土壌管理グループ
  • 代表連絡先:電話 0986-24-4279
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

沖縄県大宜味村ではソバ栽培導入が推進されてきた。この結果,地元住民だけでなく観光客にも好評を得ている。しかし、ソバ栽培が試行的に導入された圃場では湿害のため、4~5年後にソバ栽培が中止された圃場と継続された圃場に二分された。効率的なソバ栽培面積の拡大のために、ソバ栽培に適した圃場の選定手法が求められている。そこで、大宜味村のソバ圃場を対象にソバの栽培の継続と中止を分けた要因を解析し、この解析法を基にソバ栽培導入時における適地判別手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • ソバ栽培導入時におけるの適地判別手法は、図1のように整理できる。この手法の特徴は空間的階層性(大きな空間から小さな空間まで3段階)に分けて要因を整理することにある。まず、広域では対象地区を鳥瞰し、地形等を評価する。次に圃場ブロック(地形条件、灌漑条件等が同一な圃場群、農区程度)では、土地改良事業の有無と種類を評価する。さらに圃場では土壌の物理性、化学性を評価する。
  • まず、地形による乾燥、湿潤状態を推定するために標高データ(10mメッシュ、基盤地図情報)より、集水地形判別数(CGN)を算出する(図2)。CGNが高いと雨水が流れ込む領域が広くなり湿潤な地形条件となり、CGNが低いと乾燥した地形条件となる。このCGNと河川との距離の二つの指標を用いることにより地形を四つのグループに分類する。I型:河川近隣低平池(湿潤)はCGNが7.7~15.5と高く河川との距離が50m以内のグループ、II型:谷地(湿潤)はCGNが9.1と高く河川との距離が50m以上のグループ、IV型:尾根・台地(乾燥)はCGNが0.1と極端に小さなグループ、III型:中間的地形はCGNがI・II型とIV型の中位に属し、乾湿に対して中間的な特性を示す地形グループである。
  • 大宜味村における対象圃場は15圃場であり、圃場ブロックは6ブロックである(図3)。ソバ栽培が継続された圃場、中止された圃場は、圃場ブロック内の全ての圃場が同じ推移を示す(表1)。湿潤な地形条件のI型、II型の地形グループでは、ソバ栽培が中止された。また、集水地形判別数が低く乾燥した地形条件の地形グループ、中間的な地形グループではソバ栽培が継続されている。このように地形条件から適地判別が可能なことが分かる。
  • 圃場の物理性、化学性に関してはソバ栽培に対する大きな影響は認められない。ソバのように湿害に弱い作物の導入を検討する場合は、まず、地形条件に着目して適地、不適地を判別することが重要である。

成果の活用面・留意点

  • 本地区では湿害を軽減する排水改良事業が行われていないため、その効果については評価していない。他地区で本手法を適用する場合、排水改良事業の効果を評価することが重要である。
  • 圃場の物理性、化学性が極端な場合は、これらが制限要因となることも考えられる。
  • CGNによる地形分類の閾値は他地区では異なることが考えられ、別途検討が必要である。

具体的データ

図1 空間階層性に着目した適地判別手順,図2 集水地形判別数の(CGN)の算出方法,表1 ソバ栽培の継続・中止と地形分類の結果

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2013~2015年度
  • 研究担当者:島武男、原貴洋(九沖農研)、住秀和(大宜味村役場)
  • 発表論文等:
    • 島武男ら(2019)農村計画学会誌、38(2):118-127