黒毛和種育成牛向けTMRにおけるトウモロコシサイレージの配合水準

要約

黒毛和種育成牛向けTMRに、飼料の消化率を低下させることなく配合可能なトウモロコシサイレージの上限は50%程度である。

  • キーワード:トウモロコシサイレージ、黒毛和種育成牛、発酵TMR、配合水準
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域・肉用牛生産グループ
  • 代表連絡先:電話 096-242-7543
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

牛向けの飼料において自給飼料を積極的に用いることは、飼料費を下げる有効な手段である。しかし、高い日増体量が求められる黒毛和種育成牛の管理では、伝統的に配合飼料と購入乾草が利用されており自給飼料の利用が少ない。一方、トウモロコシサイレージ(CS)は、自給飼料の中でも高い栄養価を持つことから、黒毛和種育成牛の飼料素材として活用できる可能性がある。
そこで、本研究ではCSの配合水準を変えた発酵TMRを調製し、飼料成分と発酵品質を調べる。それらの発酵TMRを黒毛和種育成牛に給与する試験を実施し、飼料の消化率と栄養素の利用性の面から評価を行い、適正なCSの配合割合を検討する。

成果の内容・特徴

  • CSを含む発酵TMRは、良好な発酵品質を示すとともに、CSの配合割合が高くなるにしたがって、繊維成分含量が高くなり、非繊維性炭水化物含量が低くなる(表1)。
  • 黒毛和種育成牛による発酵TMRの摂取量に差は認められない(表2)。CSの配合割合が高くなると、TMR中の消化性の高い成分割合が減り、消化性の低い成分割合が増えるため、全体(乾物および有機物)の消化率が低下する(表1と2)。可消化養分総量の乾物摂取量は、CSの配合割合が50%程度の時に最も高くなる。
  • CSの配合割合が高くなりTMR中の繊維成分割合が上昇すると、牛の採食および反芻時間が長くなるため、本成果の設計以上にCSの配合割合を高めると摂取量の低下を招く可能性がある(表3)。
  • 飼料の消化率を低下させず、黒毛和種育成牛向けTMRに配合可能なCSの上限は50%程度である。

成果の活用面・留意点

  • 自給飼料を活用したTMRの黒毛和種育成牛向け給与技術を開発するために役立つ情報となる。
  • 本成果の内容は、フレコンバックでサイレージ調製を行ったTMRを用いて行った結果である。

具体的データ

表1 トウモロコシサイレージ(CS)を含む発酵TMRの配合割合および飼料成分,表2 乾物摂取量、消化率、可消化養分総量(TDN)摂取量,表3 採食および反芻時間(分/日)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:細田謙次、大森英之、神谷充
  • 発表論文等:Hosoda K. et al. (2019) Grassl. Sci. 65:241-248