紫黒米の栄養成分および抗酸化物質の供給源としての飼料特性

要約

抗酸化物質のアントシアニンを含有する紫黒米は、ヒツジにおいて高いデンプンの消化率と酸化ストレスマーカーの改善を示すことから、デンプンを中心とした栄養成分と抗酸化物質を同時に供給できる有望な国産濃厚飼料である。

  • キーワード:紫黒米、デンプン、酸化ストレスマーカー、ヒツジ
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域・肉用牛生産グループ
  • 代表連絡先:電話 096-242-7543
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

反芻動物は栄養状態や暑熱環境等に起因する酸化ストレスに曝されているとの報告がある。酸化ストレス条件下では、細胞が酸化ダメージを受けてその機能が低下し、最終的には疾病の発生に至ると考えられている。この酸化ストレスを軽減する一つの方策として、抗酸化物質の補給が考えられる。一方、飼料用米は、日本国内で生産できるデンプンを多く含む飼料であり、輸入されるトウモロコシに代替可能である。また、米には抗酸化物質であるアントシアニンを多く含む品種(紫黒米)があり、紫黒米はデンプンに加えて抗酸化物質の供給源になる可能性がある。
そこで、本研究では紫黒米をヒツジに給与する試験を実施して、飼料の消化率、胃液性状および酸化ストレスマーカーを調査し、紫黒米の栄養成分あるいは抗酸化物質の供給源としての評価を行う。

成果の内容・特徴

  • 本給与試験に用いた紫黒米は高濃度のアントシアニンを含む一方、対照米は含有しない(表1)。紫黒米のデンプンおよび粗タンパク質含量は、対照米のそれらと比べて、やや低くおよびやや高い。
  • 紫黒米の給与割合が高くなるにしたがって、飼料全体の消化率を示す乾物および有機物の消化率、および可消化養分総量が低くなるが、成分(粗タンパク質、非繊維性炭水化物、デンプン、酸性デタージェント繊維、中性デタージェント繊維)の消化率には差が認められないことから、飼料全体の消化率の低下は米の飼料成分含量の差に起因している(表1と2)。ほとんどを米に由来するデンプンの消化率は、いずれの給与飼料においても99.5%以上であり、非常に高い。
  • 紫黒米の給与は、第一胃液性状に影響を及ぼさない(表3)。
  • 紫黒米を給与した場合、血液の抗酸化能、グルタチオン濃度および酸化ストレスの指標となる8-ヒドロキシ-デオキシグアノシンの尿中排泄量は変化しないものの、抗酸化酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ活性が上昇する(表4)
  • 紫黒米は、デンプンを中心とした栄養成分と抗酸化物質を同時に供給できる有望な国産濃厚飼料である。

成果の活用面・留意点

  • 抗酸化性を持つデンプン系国産飼料の反芻動物向けの給与技術を開発するために役立つ情報となる。
  • 本成果の内容は、食用品種の紫黒米を用いて行った結果である。

具体的データ

表1 給与試験に用いた米の飼料成分および色素含量,表2 紫黒米の給与が消化率および可消化養分総量に及ぼす影響,表3 紫黒米の給与が第一胃液性状に及ぼす影響,表4 紫黒米の給与が酸化ストレスマーカーに及ぼす影響

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:細田謙次、宮地慎、松山裕城
  • 発表論文等:細田ら(2019)日畜会報、90:307-313