機械収穫適性に優れる暖地・温暖地向け黒大豆品種「黒招福」

要約

黒大豆品種「黒招福」は、「クロダマル」よりも2週間程度早生で、1割以上多収であり、耐倒伏性が強く機械収穫適性に優れる。粒大は「クロダマル」よりも小さいが「フクユタカ」よりも大きく、外観品質に優れる。

  • キーワード:黒大豆、多収、早生、機械収穫適性、暖地・温暖地
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・作物開発利用研究領域・大豆・資源作物育種グループ
  • 代表連絡先:電話 096-242-7874
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

黒大豆は主に煮豆に加工され、アントシアニン等を多く含む食品として注目されている。国内では主に丹波黒系黒大豆や「いわいくろ」などが栽培されているが、九州地域では「クロダマル」が大粒、良食味の品種として栽培され、煮豆だけでなく豆菓子、黄粉など様々な用途に加工されて地域産業の振興に役立っている。その反面「クロダマル」は、極晩生で倒伏に弱く低収であるなどの欠点があるため生産が不安定で、不作の年には十分な原料を確保することが難しく、生産者、実需者双方から改善が求められている。
そこで「クロダマル」を補完するために、倒伏しにくく収量性が高い暖地向けの煮豆用黒大豆品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「黒招福」は、2002年、大粒の黒大豆「Col愛媛1983宇都宮31」を母、豆腐用品種である「タチナガハ」を父として行った人工交配から育成された品種である。
  • 九州地域における成熟期は、"やや晩"であり"かなり晩"の「クロダマル」より12日程度早い(表1)。
  • 「クロダマル」に比べて、生育中の倒伏が少なく、 最下着莢節位高(一番下の莢が付く位置)は「フクユタカ」と同等に高いので、機械収穫適性に優れる(表1、図1)。
  • 「クロダマル」に比べて、子実重が1割以上多収である(表1)。
  • 「クロダマル」に比べて、百粒重が小さいが、煮豆に適し加工適性はほぼ同等である(表2、図2)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培適地は暖地および温暖地。
  • 福岡県、熊本県、佐賀県において栽培予定であり、普及見込み面積は20ha。
  • ダイズモザイクウイルス病およびダイズシストセンチュウに対する抵抗性が十分でないので、アブラムシ防除に努めるとともに適切な輪作を行う。

具体的データ

表1 「黒招福」の主な生育特性,表2 「黒招福」の煮豆加工適性試験結果,図1 「黒招福」の草姿,図2 「黒招福」の子実の外観

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2018年度
  • 研究担当者:大木信彦、髙橋将一、小松邦彦、高橋幹、中澤芳則、河野雄飛、松永亮一
  • 発表論文等:大木ら「黒招福」品種登録出願公表第33842号(2019年8月30日)