"やや晩"熟期の米粉用多収水稲新品種「笑みたわわ」

要約

「笑みたわわ」は「ヒノヒカリ」よりやや遅い熟期の"やや晩"に属するうるち種である。「ヒノヒカリ」より約47%多収で、倒伏に強い。白米のアミロース含有率はやや高く、米粉が小粒径で損傷デンプン含有率が「ヒノヒカリ」より低いことから、米粉用用途に適性がある。

  • キーワード:イネ、多収、米粉、やや晩
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・水田作研究領域・稲育種グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-7441
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、国内の炊飯米の消費量は減少傾向にあり、国内の水田の約6割でまかなえる量となっている。一方、炊飯米以外のパンや麺等の消費割合は増加傾向にある。パンや麺の原料のほとんどは小麦であり、その大部分は海外から輸入している。食料自給率向上の観点から、水田のフル活用は必要不可欠と考えられる。水田を有効活用する方法の一つに米粉パンケーキ等の炊飯米以外の用途で利用する米粉用品種の栽培がある。これまで米粉用の多収米品種として「ミズホチカラ」を育成した。しかしながら、「ミズホチカラ」の成熟期はかなり遅く、栽培地域が限定されている。こうしたことから、「ミズホチカラ」より早生の米粉用多収品種の育成が強く求められている。そこで、「ミズホチカラ」より早生の米粉用多収品種を開発する。

成果の内容・特徴

  • 「笑みたわわ」は、早生で米粉用の胚乳変異体系統「PMF84」と中生の多収米品種「モミロマン」を人工交配して得られた交雑後代のF1に晩生の多収米品種「ミズホチカラ」を人工交配した後代から育成された米粉用品種である(表1)。
  • 福岡県における普通期移植多肥および標肥栽培での出穂期は「ヒノヒカリ」とほぼ同じで「ミズホチカラ」より7日早く、成熟期は「ヒノヒカリ」より10日程度遅く「ミズホチカラ」より10日早く、暖地では"やや晩"に分類される(表1)。
  • 稈長は「ヒノヒカリ」より約5cm長く、穂長は約4cm長く、穂数はやや少ない(表1)。
  • 玄米重は、「ヒノヒカリ」に対して多肥では43%、標肥では49%多収である。「ミズホチカラ」に対しては同程度である。福岡県朝倉市での移植栽培では「モミロマン」に対して39%多収である(表1)。
  • 耐倒伏性は「ヒノヒカリ」より優る"強"である(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型は"PiaPibPi20 "で、葉いもち圃場抵抗性は"弱"、穂いもち圃場抵抗性は不明である。白葉枯病圃場抵抗性は"弱"で、穂発芽性は"やや難"である(表1)。
  • 玄米の千粒重は「ヒノヒカリ」より2g程度重く「ミズホチカラ」と同程度である(表1)。
  • 白米のアミロース含有率は「ヒノヒカリ」より明らかに高く「ミズホチカラ」と同程度である(表1)。米粉の粒径は「ヒノヒカリ」より小さく、損傷デンプン含有率も低い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 暖地および温暖地向き、米粉用として福岡県、熊本県等で普及予定(約100ha)。
  • トリケトン系4-HPPD阻害型除草剤成分(ベンゾビシクロン、メソトリオンおよびテフリルトリオン)に対する感受性が高いので、それらを含む除草剤は使用しない。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子Pibを持つが、葉いもち圃場抵抗性が弱いため、種子消毒等慣行防除を徹底し、侵害菌の発生に注意するとともに、発生が見られた時は、防除を徹底する。
  • 白葉枯病に弱く、縞葉枯病に罹病性であるため、常発地での栽培は避ける。

具体的データ

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その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「先導プロ」)
  • 研究期間:2009~2019年度
  • 研究担当者:中西愛、片岡知守、田村克徳、竹内善信、佐藤宏之、田村泰章、坂井真、伏見力
  • 発表論文等:竹内ら「笑みたわわ」品種登録出願公表第33876号(2019年10月1日)