"やや晩"熟期でいもち病に強い水稲新品種「にこまるBL1号」

要約

「にこまるBL1号」は「にこまる」と同熟期の"やや晩"に属するうるち種である。いもち病圃場抵抗性遺伝子Pi39を持つ「にこまる」の同質遺伝子系統である。

  • キーワード:イネ、いもち病抵抗性、同質遺伝子系統、にこまる
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・水田作研究領域・稲育種グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-7441
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、温暖化にともない玄米外観品質の低下、いもち病等の発生による玄米収量の低下の被害が発生している。暖地地域では、「にこまる」等の基幹品種にいもち病の被害が増えており、いもち病抵抗性を付与した品種の育成が求められている。その一方、「にこまる」等の良食味品種は、消費者に根強い人気がある。そこで、「にこまる」にいもち病抵抗性のみを付与した同質遺伝子系統を開発する。

成果の内容・特徴

  • 1.「にこまるBL1号」は、「にこまる」といもち病圃場抵抗性遺伝子Pi39を持つ「中部111号(後の「みねはるか」)」を人工交配したF1に「にこまる」を5回連続戻し交配した後代から育成された系統である。「にこまるBL1号」は、Pi39を含む短い染色体領域以外の領域は、全て「にこまる」型である(表1、図1)。2.福岡県における普通期移植栽培での出穂期は「ヒノヒカリ」より5日程度遅く「にこまる」とほぼ同じ、成熟期は「ヒノヒカリ」より8日程度遅く「にこまる」とほぼ同じ、暖地では"やや晩"に分類される(表1)。3.稈長は「にこまる」と同程度か数cm短く、穂長、穂数は「にこまる」とほぼ同じである(表1)。4.玄米重は、「にこまる」並で、「ヒノヒカリ」より14%程度多収である(表1)。5.耐倒伏性は「にこまる」並かやや優る"中"である(表1)。6.いもち病真性抵抗性遺伝子型は"Pia、Pii "で、いもち病圃場抵抗性遺伝子Pi39を持つ。葉いもち圃場抵抗性、穂いもち圃場抵抗性とも"強"である。白葉枯病圃場抵抗性は"中"で、縞葉枯病には"罹病性"である。穂発芽性は"中"である(表2)。7.玄米の千粒重は「にこまる」並で、外観品質も「にこまる」並である。高温登熟耐性は「にこまる」並の"中"である(表1)。8.白米のアミロース含有率と玄米の蛋白質含有率は「にこまる」と同程度である。炊飯米の食味は「にこまる」、「ヒノヒカリ」並の良食味である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 1.白葉枯病にやや弱く、縞葉枯病に罹病性であるため、常発地での栽培は避ける。2.暖地および温暖地向き、主食米用品種として福岡県等で普及予定(2023年度に約120ha)である。

具体的データ

表1 「にこまるBL1号」の主要特性,表2 「にこまるBL1号」のいもち病抵抗性,図1 「にこまるBL1号」のグラフ遺伝子型

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動)
  • 研究期間:2006~2019年度
  • 研究担当者:田村克徳、竹内善信、片岡知守、中西愛、佐藤宏之、田村泰章、坂井真、梶亮太
  • 発表論文等:田村ら「にこまるBL1号」品種登録出願公表第33877号(2019年8月30日)