イチゴ果実の抗酸化能は測定が簡便な総ポリフェノール量を代替指標として利用できる

要約

イチゴ果実の抗酸化能を表す酸素ラジカル吸収能(親水性ORAC)と総ポリフェノール量は強い正の相関を示すことから、測定が簡便な総ポリフェノール量を抗酸化能の代替選抜指標として利用できる。

  • キーワード:イチゴ、抗酸化能、酸素ラジカル吸収能、ポリフェノール
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・園芸研究領域・イチゴ育種グループ
  • 代表連絡先:電話 050-3533-1833
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イチゴにはアントシアニン、エラグ酸といったポリフェノールやビタミンCなどの抗酸化能が高い機能性成分が含まれていることが知られている。近年、食に対して疾病予防効果や健康増進効果を求めるニーズが強くなっており、機能性成分に富んだ抗酸化能が高いイチゴ品種の育成は、さらなる需要の開拓に繋がると考えられる。一方、妥当性が確認された抗酸化能の測定法である親水性ORACの測定方法は分析手順が複雑で多検体を扱う育種には適用し難い。そこで、効果的な育種を行うため、親水性ORACの効率的な代替選抜指標を開発する。

成果の内容・特徴

  • 年次・収穫時期の異なる複数の品種・系統であっても成熟時のイチゴ果実では、親水性ORACと総ポリフェノール量は強い正の相関(r=0.97)を示すため、総ポリフェノール量は親水性ORACの代替選抜指標に利用できる(図1)。
  • 総ポリフェノール量測定法は親水性ORAC分析に必要となる高価な蛍光プレートリーダーを使用しないほか、必要な試薬が少なく分析工程も約3分の1で済むため、簡便に測定できる(表1)。マイクロプレートを使用した場合は、プレート1枚当たり約4倍の検体数を効率的に評価できる。

成果の活用面・留意点

  • 本技術はイチゴにおける抗酸化能の育種選抜に適用できる。
  • 本成果は促成栽培において得られた結果である。
  • 親水性ORACおよび総ポリフェノール量測定は「食品機能性評価マニュアル集第IV集」の方法である。

具体的データ

図1 親水性ORACと総ポリフェノール量の相関,表1 総ポリフェノール量と親水性ORACの測定法における項目の比較

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:藤田敏郎、曽根一純、沖智之
  • 発表論文等:藤田ら(2020)日食科工誌、67(3):109-114