シアントラニリプロール施用によりサツマイモ塊根へのアリモドキゾウムシ被害を低減できる

要約

シアントラニリプロール水和剤4,000倍希釈、1,000L/haの葉面散布は、既存の登録農薬クロルピリホス粒剤の60kg/ha株元散布と同程度に、アリモドキゾウムシに対する防除効果および本種によるサツマイモ被害を低減する効果がある。

  • キーワード:かんしょ、ジアミド系薬剤、葉面散布、南西諸島
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域・熱帯性病害虫管理グループ
  • 代表連絡先:電話 098-840-3553
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

南西諸島のサツマイモ栽培の最重要害虫であるアリモドキゾウムシに対する実用的な薬剤は、植付け時に植溝処理するフィプロニル(フェニルピラゾール系)と植付け後に株元散布するクロルピリホス(有機リン系)のみである。同じ薬剤あるいは作用機作が同じ系統の薬剤を繰り返し使用すると抵抗性が発達しやすいため、これら2剤に対する本種の抵抗性発達が懸念されている。系統の異なる多様な薬剤をローテーションしながら使用することで抵抗性発達を遅延・回避する「薬剤抵抗性管理」という観点から、新たな別系統の薬剤の登録が求められている。また苗定植後では、クロルピリホス粒剤の施用に時間・労力がかかることから、定植後でのより省力的な施用が可能となることが求められている。そこで、クロルピリホスとは異なるジアミド系薬剤であるシアントラニリプロールの液剤散布によるアリモドキゾウムシ防除効果を圃場試験によって明らかにする。

成果の内容・特徴

  • サツマイモ栽培において、定植2および4か月後でのシアントラニリプロール水和剤4,000倍希釈(1,000L/ha)の葉面散布は、クロルピリホス粒剤の株元散布(60kg/ha)と同程度にアリモドキゾウムシ個体群密度を制御できる(図1)。
  • 上記のシアントラニリプロール処理により、アリモドキゾウムシの塊根内寄生数がクロルピリホスと同程度に低減され、本種による塊根被害率が低減する(表1、2017年試験結果)。
  • シアントラニリプロールの葉面散布に要する時間は5時間/人/haであり、クロルピリホスの株元散布(20時間/人/ha)に比べ、散布時間を短縮できる。

成果の活用面・留意点

  • シアントラニリプロール水和剤のアリモドキゾウムシへの適用拡大は、2018年9月26日に認可された。
  • アリモドキゾウムシ防除のためのシアントラニリプロール水和剤散布により、鱗翅目害虫の同時防除が可能である。
  • 本剤は、栽培期間中、収穫の7日前まで3回以内の散布が可能であるが、本剤に対するアリモドキゾウムシの抵抗性発達を抑制するため、本剤のみの連用を避ける必要がある。

具体的データ

図1 植付け後の薬剤処理による株あたりゾウムシ寄生数/処理,表1 植付け後の薬剤処理による株あたり塊根重

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2017~2018年度
  • 研究担当者:市瀬克也、島克弥(エフエムシーケミカルズ)
  • 発表論文等:
    Ichinose K. and Shima K. (2020) Arthropod Manag. Tests 45:1,
    doi:https://doi.org/10.1093/amt/tsaa001