イミダクロプリド抵抗性トビイロウンカにおけるネオニコチノイド系殺虫剤に対する薬剤抵抗性発達程度

要約

イミダクロプリド抵抗性が発達したトビイロウンカは、チアメトキサムとクロチアニジンに対する交差抵抗性発達程度が強いが、ジノテフランとニテンピラムに対する交差抵抗性程度が弱い。

  • キーワード:ネオニコチノイド系殺虫剤、イミダクロプリド、LD50値、交差抵抗性
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域・虫害グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-6071
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ネオニコチノイド系殺虫剤のイミダクロプリドに対するトビイロウンカの薬剤抵抗性が発達して以来、トビイロウンカがイミダクロプリド抵抗性発達に伴って、ネオニコチノイド系殺虫剤のチアメトキサムとクロチアニジン、ジノテフラン、ニテンピラムに対しても抵抗性を獲得する交差抵抗性が発達し、トビイロウンカ防除がより困難になると懸念される。
2005-17年までの日本飛来個体群におけるネオニコチノイド系殺虫剤5剤の薬剤感受性データより、イミダクロプリド抵抗性の上昇による感受性変化の動向を把握する。トビイロウンカの東アジア(日本、中国、台湾)、ベトナム北部と南部個体群における薬剤感受性のデータを一つに合わせ、イミダクロプリド抵抗性発達とネオニコチノイド他剤に対する抵抗性発達との関連性を明らかにする。人為的にイミダクロプリドの半数致死薬量(LD50値)を用いて選抜したイミダクロプリド選抜系統と、アセトンで選抜した対照系統を用い、室内試験からネオニコチノイド系殺虫剤5剤に対する薬剤感受性を比較し、交差抵抗性の発達の有無を解明する。

成果の内容・特徴

  • 日本飛来個体群のネオニコチノイド系殺虫剤4剤に対するLD50値は、イミダクロプリドのLD50値の上昇に伴い、2013年以降、チアメトキサムとクロチアニジンのLD50値は5.0-10μg/gと高く推移する。一方で、ジノテフランとニテンピラムのLD50値は1-2.0μg/gと推移し、大きな年次変化は見られない(図1)。
  • 3地域の感受性データを合わせた解析から、イミダクロプリドのLD50値が高い個体群ほど、チアメトキサムとクロチアニジンのLD50値も高くなるが、ジノテフランとニテンピラムはそれほど高くはならない(図2)。
  • フィリピンとベトナム個体群のイミダクロプリド選抜系統におけるチアメトキサムとクロチアジンのLD50値は対照系統よりも有意に高く、2剤に対する交差抵抗性が強く発達する。フィリピン個体群のイミダクロプリド選抜系統におけるジノテフランとニテンピラムのLD50値は対照系統よりも有意に高い、一方で、ベトナム個体群の両系統間に2剤のLD50値に大きな差が見られない。両個体群の2剤に対するLD50値はチアメトキサムとクロチアニジンのLD50値の10分の1であり、交差抵抗性の発達程度が弱い(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 交差抵抗性が発達しにくい複数の殺虫剤を組み合わせたローテーション散布の有効性の根拠となる。
  • 害虫の薬剤抵抗性管理において、薬剤抵抗性の発達に関与する遺伝子特定による抵抗性モニタリングだけでなく、人為選抜系統を使った室内実験による交差抵抗性の発達要因解析を進める必要がある。

具体的データ

図1 2005-2017年の日本飛来個体群におけるネオニコチノイド系殺虫剤5剤に対する半数致死薬量の推移,図2 イミダクロプリドLD50値に対するネオニコチノイド系殺虫剤4剤のLD50値,図3 フィリピンとベトナム個体群より作出したイミダクロプリド選抜系統と対照系統におけるネオニコチノイド系殺虫剤5剤に対する薬剤感受性の比較

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:藤井智久、真田幸代、園田昌司、松村正哉
  • 発表論文等:Fujii et al. (2019) Pest Manag. Sci. 76: 480-486