九州北部2年4作(稲・麦・大豆・麦)大規模水田スマート一貫体系の作業モデル(案)

要約

九州北部2年4作におけるスマート農業一貫体系は、田植機・トラクタの自動運転作業による規模拡大効果、ドローンやIoTセンサー、自動運転(収量)コンバインによる作業・生育・収量の見える化や水稲追肥作業外注で、2割の規模拡大、3割の経営体収益増が期待できる。

  • キーワード: スマート農業、二毛作、自動運転、規模拡大、所得増加
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・水田作研究領域・作業体系グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農作業人口の減少に伴い農作業者あたりの負担が増加している。土地利用型農業においては、少人数で大規模栽培を行える担い手型の技術構築が必要不可欠であり、特に九州北部2年4作(稲・麦・大豆・麦)の二毛作、土地利用率200%地域では、夏作と冬作、水田作と畑作が切り替わる時期が短く、規模拡大の阻害要因となっている。
そこで、本研究では九州北部二毛作地帯でスマート農業一貫体系の実証試験を実施し、2割の規模拡大と収益増が期待できる作業モデルを構築する。

成果の内容・特徴

  • 本スマート農業一貫体系は、自動運転田植機(8条)、自動運転トラクタ(83kW{113ps})、自動運転コンバイン(刈り幅2.1m、88kW{120ps}、収量測定機能を利用)、IoTセンサー、生育観測用ドローンと可変追肥サービスで構成される。これらの導入で、約60ヘクタール(水稲40ha、大豆20ha、麦60ha)300筆の分散圃場(中山間不整形圃場を含む)を管理する生産者が、田植えや耕うん作業のピークに対応できる(図1)。
  • 自動運転田植機(革新工学センター試作機)は、苗補給を含め慣行5名であった作業が3名で可能となり、省力化による規模拡大効果は40%に相当する(図2)。自動運転田植え機導入で慣行田植機と2台同時に稼働でき、2割の規模拡大時でも1.8日早く終わる。自動運転トラクタは、繁忙期の夜間作業により日作業が40%拡大し(図2)、麦跡・水田跡・大豆跡の耕うんピーク時に、それぞれの耕うん作業につき7.5・5・2.5日の夜間耕うん作業を追加し、規模拡大に対応する。
  • 水稲栽培ではドローン、IoTセンサー、自動運転(収量)コンバインによる作業状況・生育・収量等の見える化に加え、センシング結果を活かした可変追肥を外注しても慣行追肥体系と収量は同等で、真夏の見回りをIoTセンサーで削減できる(図3)。
  • これらスマート農業一貫体系を導入して経営試算をした結果2割の規模拡大が妥当で、その場合、同規模の既存体系を導入し規模拡大しない場合より農産物販売の増加などで30%収益増加が期待できる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、スマート農業一貫体系を水稲・麦・大豆2年4作二毛作地帯に適用した場合を想定しているが、2年3作および単作地帯へも波及できる可能性がある。
  • 実証における中山間不整形圃場を含む平均20a圃場における能率は、自動運転田植機3.2ha/日、自動運転トラクタ4.0ha/日、夜間作業追加時5.6ha/日。1日の実働6時間(事務所滞在時間含まず)で計算。

具体的データ

図1 二毛作(水稲・麦・大豆・麦)の年間作業時間と導入したスマート農業技術,図2 自動運転田植機(無人)・自動運転トラクタ(夜間有人作業)の規模拡大効果,図3 ドローン、IoTセンサー、収量コンバインによる水稲追肥、見回りを代替、収量監視,図4 2割の規模拡大で3割の経営体収益増

その他

  • 予算区分:交付金、R01補正「スマート農業」
  • 研究期間:2019~2020年度
  • 研究担当者:
    高橋仁康、中野恵子、松尾直樹、官森林、渡邊修一、深見公一郎、野見山綾介、佐々木豊、大段秀記、松中仁、岡崎泰裕
  • 発表論文等: