沖縄向け加工原料用カンショ「ちゅらかなさ」
要約
カンショ品種「ちゅらかなさ」は、主力品種「ちゅら恋紅」と比べて沖縄での春植え栽培では収量が同程度、秋植え栽培では多く、ペースト加工原料に適する。アントシアニン含量を示す色価は「ちゅら恋紅」よりもやや高く、ペーストは「ちゅら恋紅」よりもやや青味の強い色調を呈する。
- キーワード:カンショ、ペースト加工用、秋植え栽培、多収、アントシアニン含量
- 担当:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域・熱帯性病害虫管理グループ
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
台風や干ばつなどの気象災害に強いカンショは、沖縄県における重要な畑作物である。沖縄県産の紫カンショは「紅いも」と称され、その色調を生かした加工ペースト菓子は土産品として人気が高い。沖縄では温暖な亜熱帯の気候を利用してカンショの周年栽培が可能であるが、秋植えに向く品種がないため、秋植え栽培は普及していない。一方、沖縄の重要な産業である「紅いも」ペースト加工工場の稼働率向上を図るために、秋植え栽培の普及による原料いもの周年供給が望まれる。そこで秋植え栽培の普及を目指したペースト加工原料用品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「ちゅらかなさ」は、いもの外観が良い紫肉色品種「パープルスイートロード」を母、立枯病抵抗性を有するインドネシア在来系統「90IDN-47」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
- 塊根の形状は楕円形(紡錘形)で、皮色は"淡紫"、肉色は「アヤムラサキ」よりも薄いが「ちゅら恋紅」よりもやや濃い"紫"である。しょ梗の強さおよび外観は"中"程度で、条溝、裂開、皮脈などは見られない(表1、図1)。
- 「ちゅらかなさ」は、慣行の春植え栽培において、上いも重は多収品種「ちゅら恋紅」と同程度、秋植え栽培で「ちゅら恋紅」よりも多い。また、沖縄で問題となるゾウムシ類の抵抗性は"中"である(表2)。
- アントシアニン含量を示す色価は「ちゅら恋紅」よりもやや高い。また、ペーストは「ちゅら恋紅」よりもやや青味の強い色調を呈する(表2、図2)。
- サツマイモネコブセンチュウおよびミナミネグサレセンチュウ抵抗性はそれぞれ、"中"および"やや強"、立枯病抵抗性は"やや強"、黒斑病およびつる割病抵抗性は"中"で、貯蔵性は"やや難"、萌芽性は"不良"である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 沖縄のカンショ栽培地域に適する。
- 苗の萌芽性が不良のため、育苗の際には種いもの伏せ込み間隔を狭くする、伏せ込み数を多くするなどして苗の確保に努める必要がある。
- サツマイモ基腐病の蔓延を防止するため、健全苗の使用を徹底する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2009~2019年度
- 研究担当者:岡田吉弘、市瀬克也、深見公一郎、吉武啓、甲斐由美、小林晃、境垣内岳雄、末松恵祐
- 発表論文等:
- 小林ら「ちゅらかなさ」品種登録出願公表第34567号(2020年6月29日)
- Okada Y. et al. (2019) Plant Cell Rep. 38: 1383-1392