総ポリフェノール量が多く、抗酸化活性が高いイチゴ品種「ぽりっちご」(旧系統名:久留米66号)

要約

「ぽりっちご」(旧系統名:久留米66号)は、抗酸化活性が高い既存品種「おいCベリー」より総ポリフェノール量が多く、40%程度高い抗酸化活性を有する。商品果率が高く、収量や食味は「とちおとめ」と同程度で、日持ち性に優れる促成栽培向けの品種である。

  • キーワード:イチゴ、促成栽培、ポリフェノール、抗酸化活性
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・園芸研究領域・イチゴ育種グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イチゴにはアントシアニンやエラグ酸といったポリフェノール、ビタミンCなど抗酸化活性が高い機能性成分が含まれていることが知られている。近年、食に対して疾病予防効果や健康増進効果を求めるニーズが強くなっており、それに応えた新しい機能性表示食品制度が施行され、野菜等の生鮮食品についても機能性表示が許可されるようになった。そのため、機能性成分に富んだイチゴ品種の育成は、さらなる需要の開拓に繋がると考えられる。そこで、イチゴの健康機能性として抗酸化活性に着目し、抗酸化活性の高い品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ぽりっちご」(旧系統名:久留米66号)は「とちおとめ」、「イチゴ中間母本農1号」、「麗紅」および抗酸化活性の高い「Douglas」に由来する08a05-07に、「さちのか」を交雑した実生集団から選抜した一季成り性品種であり、促成栽培に適する。
  • 果実の総ポリフェノール量が既存品種より高く、抗酸化活性は高ビタミンC品種「おいCベリー」より3年間の平均で40%高い値を示す(表1)。
  • 草姿は"立性"で、冬期の草勢は強く、果房伸長性に優れる。頂果房花数は「とちおとめ」より少なく、「とよのか」と同程度である(図1、表2)。
  • 花芽分化期は、ポット育苗では9月中下旬であり、促成栽培での開花日は「とちおとめ」よりも10日程度遅い。収穫開始日は「とちおとめ」より19日程度遅いため、2月末までの早期収量が少ないが、商品果率が高く4月末までの全期収量は「とちおとめ」と同等である(表3)。果実は15g程度で果形は"長円錐"、果皮色は"赤~濃赤色"であり(表3、図1)、萼片が直立する特徴的な外観を有する(図1)。糖度は「おいCベリー」と同等で酸度はやや低く、食味は"良"である。硬度は「おいCベリー」と同等で、日持ち性は"やや良"である(表3)。

成果の活用面・留意点

  • うどんこ病および萎黄病に対する抵抗性は中程度、炭疽病に対する抵抗性は低いため、健全な親株から増殖を行うとともに、育苗期を含め防除に努める。
  • 普通促成栽培では、収穫開始日が「さちのか」並みでやや晩生であるため、早出し作型を狙う場合は、短日夜冷処理などを行うことが望ましい。

具体的データ

表1 促成栽培における果実の総ポリフェノール量および抗酸化活性,図1 「ぽりっちご」の草姿と果実,表2 促成栽培における形態的特性,表3 促成栽培における早晩性、収量および果実品質

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2010~2020年度
  • 研究担当者:北谷恵美、藤田敏郞、沖智之、曽根一純、木村貴志、遠藤(飛川)みのり、沖村誠
  • 発表論文等:北谷ら「ぽりっちご」品種登録出願公表第35191号(2021年5月6日)