有利販売や商談で活用できる「イチゴ価格予測シミュレーター」

要約

「イチゴ価格予測シミュレーター」は、過去の卸売価格動向に基づき、翌週分と1シーズン分(11月~翌年4月)の日別卸売価格を予測することができる。有利販売を目指した出荷だけでなく、契約的取引の商談で活用できるプログラムである。

  • キーワード:イチゴ、価格予測、卸売価格、プログラム、有利販売
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・作物開発利用研究領域・6次産業化グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イチゴは、施設栽培とはいえ、取引価格の基準になる卸売価格(以下「価格」という)の変動が避けられない青果物である。このため、価格が高くなるタイミングに合わせた収穫・出荷ができれば、生産者の収益向上が期待できる。しかし、イチゴの価格変動は、先行研究で前日の価格・天気・時期・曜日の影響を受けるとされたものの、前日の価格・天気情報に基づく価格予測では、当日分の予測しかできず、卸売市場への出荷が間に合わない。そこで、生産者等の市場出荷に資するようなイチゴ価格を予測するプログラム「イチゴ価格予測シミュレーター」を開発する。

成果の内容・特徴

  • 「イチゴ価格予測シミュレーター」は、過去の価格動向に基づき、日別価格をシミュレーションすることができるプログラムである。翌週分の価格予測だけでなく、この予測より精度が落ちるものの、1シーズン分(11月~翌年4月)も予測できる。
  • シミュレーションの準備として、まず農林水産省HPの統計情報「青果物卸売市場調査(日別)」から、過去5年分の卸売市場のイチゴ日別数量・日別価格をダウンロードし、次に「曜日」と「日にち」の2種類のデータセットを作成する必要がある。このうち「曜日」の方は、過去5年間の日別卸売数量・日別卸売価格のデータを曜日に合わせて入力したもので、もう1つの「日にち」の方は、同じデータを月日に合わせて入力したものである(図1)。
  • シミュレーターによる予測は、1)11月~12月中旬、2)12月中旬~下旬、3)1月~4月の3つのシートで行う(図1)。
  • 翌週分の価格を予測する場合、週末の実際の価格を入力すれば、結果が出力される(表1)。なお11月?12月中旬の期間は、価格変動が非常に大きいため、出荷者が自らの出荷予定数量を入力することにより、予測精度が高まる。
  • 1シーズン分(11月~翌年4月)の価格を予測する場合、「11月~12月」と「1月~4月」の2期間に分けて行う。「11月~12月」については10月最終週末の実際の価格が、「1月~4月」については初市での実際の価格が必要である。例えば、11月第1週末の予測価格を用いて、11月第2週の価格を予測し、この1週間分の予測を繰り返すことで、精度が落ちるものの、翌年4月までの価格を予測できる。
  • 東京都中央卸売市場に入荷したイチゴ(2019年11月~2020年4月)で予測をしたところ、135日中125日(92.6%)で実際の価格が予測の範囲内にあった(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本プログラムは、 Microsoft Excel ©で動作する。ただし利用には、許諾契約が必要である。
  • ユーザーとして、第1にJAや任意出荷組合などイチゴの卸売市場出荷者を想定している。本プログラムの利用により、高く売れる日に出荷するなどの有利販売や、生協(宅配・共同購入)・小売業者等との契約的取引の商談で活用できる。第2に卸売業者・仲卸業者、生協や小売業者の担当者も想定しており、契約的取引の商談の際に活用できる。

具体的データ

図1 「イチゴ価格予測シミュレーター」のフローチャート,表1 シミュレーションに必要なデータと2019年度・東京都中央卸売市場のシミュレーション例,図2 2019年11月~2020年4月のイチゴ卸売価格の予測値と実際の価格

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2015~2016年度、2020年度
  • 研究担当者:大西千絵、森江昌史
  • 発表論文等:
    • 大西、森江(2016)農業市場研究、25(2):28-35
    • 大西、森江(2021)アグロフードマーケティングTOOL第3集:46-53