大規模ゲノム情報比較のためのブラウザ TASUKE+

要約

大規模なゲノム多型情報を迅速に閲覧、共有可能なゲノムブラウザである。一塩基多型や挿入欠失を遺伝子情報や、ゲノムワイド関連解析の結果と並列して表示できる。ウェブブラウザを介してゲノム情報が誰でも簡便に利用できるようになり、大量ゲノム情報を活用した研究の加速化への貢献が期待される。

  • キーワード:比較ゲノム、次世代シーケンサー、ゲノムワイド関連解析、一塩基多型、挿入欠失
  • 担当:高度解析センター・ゲノム情報大規模解析チーム
  • 代表連絡先:電話 029-838-7095
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、次世代シーケンサーを利用した、数百品種に上る大規模なゲノム解読情報を用いて、収量や開花期といった表現型情報と原因遺伝子座の関連を解析する研究(ゲノムワイド関連解析)が頻繁に行われている。しかし、これらのデータを他者が利用可能な形式で公開している研究は多くなく、十分に活用できているとは言えない状況にある。そこで、本研究では、大量のゲノム情報の迅速な閲覧、共有、公開を可能とするシステムを開発する。専門的な情報解析技術を持たなくても、ウェブブラウザを介して、ゲノム情報に簡単にアクセスでき、多くの研究者が容易にゲノム情報を利用できる本システムにより、あらゆる分野でゲノム情報を活用した研究の加速化が期待される。

成果の内容・特徴

  • 本TASUKE+システムは、ウェブブラウザを利用したゲノムブラウザであり、ゲノム中の多型情報(一塩基多型、挿入欠失)を1塩基の解像度から、最大2000万塩基の広範囲にわたり高速に表示することが可能である(図1)。ゲノム多型が遺伝子へ与える影響をグラフィカルに表示でき、ゲノム情報の機能面での比較が容易である。これらの情報を、インターネットを通じて特定のユーザ間で共有、あるいは一般に公開することが可能である。
  • ゲノム多型情報に加えて、ゲノムワイド関連解析の結果、遺伝子アノテーション情報、連鎖不平衡(LD)ブロックなど様々な情報を搭載可能である。ゲノムワイド関連解析の結果(マンハッタンプロット)と多型の遺伝子へ与える効果、表現型情報とを合わせて、効率よく閲覧できる機能は、表現型の原因となる多型の候補を見つける上で有用である。
  • ユーザが選択した任意の領域あるいは遺伝子について分子系統樹が作成でき、品種間の関係性を解析できる。任意のサイトや領域について、多型情報に留意したPCRプライマー設計や、blastとePCRでのプライマーの評価機能を搭載しており、DNAマーカーの探索から実験用のプライマー設計までを一貫して行うことができる。
  • インターネットを介して外部データベースとの双方向の連携を容易にする設計となっており、既存のデータベースとの連携や、統合的なデータベースの中での1つの機能として組み込むことができる。

成果の活用面・留意点

  • 参照ゲノム配列をベースとしたゲノム多型データに対応しており、いかなる生物種のデータも搭載可能である。すでに公開されている176品種のイネ(温帯ジャポニカ)のゲノム多型および、ゲノムワイド関連解析データを載せたデータベース(https://tasuke-plus.dna.affrc.go.jp/)を公開している。
  • イネ遺伝子アノテーションプロジェクトのデータベース(RAP-DB)で利用され、約300品種のゲノム多型情報を閲覧することができる。

具体的データ

図1 TASUKEのメイン画面

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(DBプロ)
  • 研究期間:2014~2019年度
  • 研究担当者:
    熊谷真彦、西川大貴(株・ダイナコム)、川原善浩、脇本泰暢(ビッツ株式会社)、伊藤龍太郎(株・ダイナコム)、田部井紀雄(株・ダイナコム)、田中剛、伊藤剛
  • 発表論文等:Kumagai M. et al. (2019) DNA Research 26(6):445-452.