WCS用稲収穫作業における機械体系間の圃場内作業効率及び収穫調製費用の比較

要約

WCS用稲の収穫作業において、ハーベスタを装着した大型トラクタは汎用型飼料収穫機よりも10a当たり作業時間が短く圃場内作業効率が高い。一方、収穫期間を2ヶ月に設定した場合、機械装備費用の高さから、収穫規模70haまでは汎用型飼料収穫機による10a当たり収穫調製費用が低い。

  • キーワード:水田飼料作、汎用型飼料収穫機、大型収穫機、作業効率、収穫調製費用
  • 担当:本部・農業経営戦略部・経営計画ユニット
  • 代表連絡先:電話 0287-37-7224
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、多様な土地条件に適応する飼料収穫機械と調製技術の開発が進展する等、府県においても飼料生産を取り巻く環境は大きく変化している。しかし、飼料収穫用機械の多くは非常に高額であり、コントラクター等の飼料生産組織の安定的運営のためには稼動面積、圃場の区画規模、作業効率、収穫調製費用を考慮した作業・機械体系の選択が収益性の観点から重要である。
そこで本研究では、フォレージハーベスタ装着の大型トラクタと圧縮梱包・ラッピングマシン(以下大型体系)、汎用型飼料収穫機及び自走式ラッピングマシンを組み合わせた機械体系(以下汎用体系)について、圃場内作業効率と収穫調製費用を比較する。大型体系ではフォレージハーベスタ装着トラクタ3セット(125ps・3条、155ps・4条、195ps・4条。以下大型収穫機)と圧縮梱包・ラッピングマシン2台でWCS用稲260haを、汎用体系では汎用型飼料収穫機4台でWCS用稲111.4ha、飼料用トウモロコシ109haを収穫する。

成果の内容・特徴

  • 収穫作業機別に10a当たり圃場内作業時間を算出したところ、大型収穫機は汎用型飼料収穫機よりも10a当たり圃場内作業時間が短く圃場内作業効率が高い。また、大型収穫機・汎用型飼料収穫機ともに圃場区画規模の影響は認められない(図2)。
  • 10a当たり収穫調製費用は大型体系が18,953円/10a、汎用体系が16,592円である(表1)。汎用体系の収穫調製費用が低いが、これは大型体系では機械装備が過大なこと、汎用体系では圃場から集積場所への運搬を行わない(運搬費用を経費に含めていない)ことが影響している。
  • 大型体系での収穫作業機と圧縮梱包・ラッピングマシンを1式に縮小し、汎用体系で圃場から集積場所への運搬費用を加算した場合、作業期間制約として収穫期間を2ヶ月に設定すると、10a当たり収穫調製費用は、稼働面積80haを境に大型体系が汎用体系より低くなる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果はコントラクターの設立、あるいは機械更新時の基礎データとして活用できる。
  • WCS用トウモロコシ収穫で、子実・雌穂を破砕処理する場合は大型体系を選択する必要がある。
  • 圃場への農道が狭小な場合には、大型体系の採用は困難な場合がある。
  • 成果の内容3について、大型体系で使用するトラクタを堆肥散布や耕耘・整地作業で汎用利用し面積当たりの減価償却費用が低下する場合、この転換点は80haよりも低くなる。
  • 成果の内容1~3について、大型体系は熊本県阿蘇地域で事業展開する機械販売メーカー、汎用体系は栃木県那須地域で事業展開するコントラクターにおける2018年の事例データに基づく。

具体的データ

図1 大型体系と汎用体系,図2 10a当たり圃場内作業時間の比較,表1 体系別10a当たり収穫調製費用(実績ベース),図3 機械体系別の10a当たり収穫調製費用の試算

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2018~2019年度
  • 研究担当者:淸水ゆかり、西村和志、恒川磯雄
  • 発表論文等:淸水ら(2020)農業経済研究、92(1):28-33