9月期においしい焼き芋を供給するための嗜好性調査によるかんしょ貯蔵方法の選定

要約

9月期においしい焼き芋を供給するためには、8月中旬に収穫した「べにはるか」を2週間程度11~13°C で貯蔵した後に出荷することが有効である。この方法によって、糖化と粘質化が進み、消費者及び流通業者の評価が高まり、販売価格の向上が期待できる。

  • キーワード:消費者・実需者ニーズ、嗜好性調査、低温貯蔵、早期糖化、焼き芋
  • 担当:本部・農業経営戦略部・マーケティングユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7971
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年の青果用かんしょにおいては、量販店店頭の焼き芋機で焼成された焼き芋の販売が広く普及しており、「安納いも」や「べにはるか」等の、甘味が強くしっとりとした肉質を持つ高糖度のかんしょ品種の需要が高い。これらのかんしょは、夏季においても需要があり、年間を通しての出荷が求められている。しかし、高糖度のかんしょ品種においても、収穫直後では焼き芋にしても甘味が少なく、収穫期初期の9月においしい焼き芋を供給することが焼き芋業界の課題になっている。そこで、かんしょ出荷の端境期である9月期においしい焼き芋を提供することを目指して、生産現場及び技術開発機関では、長期貯蔵が可能な「ベニアズマ」の貯蔵期間を延長する方法の確立か、収穫期初期に収穫した「べにはるか」を早期糖化させる方法の確立を検討している。そのため、これらの貯蔵条件を変えたかんしょを用いた焼き芋の嗜好性調査を実施し、消費者ニーズ及び実需者ニーズに則した貯蔵方法の選定を行う。

成果の内容・特徴

  • 2017年9月中旬に実施した3種類のかんしょ(3週間常温貯蔵した「べにはるか」、3週間10°C 貯蔵した「べにはるか」、1年間13°C 貯蔵「ベニアズマ」)を用いた焼き芋の消費者への嗜好性調査(有効回答44人)では、3週間10°C 貯蔵した「べにはるか」の評価が高い(表省略)。
  • 2018年9月上旬に流通期間1週間を考慮したA:3週間常温貯蔵した「べにはるか」、B:2週間13°C 貯蔵後1週間常温貯蔵「べにはるか」、C:2週間11°C 貯蔵後1週間常温貯蔵「べにはるか」、D:1年間13°C 貯蔵後1週間常温貯蔵「ベニアズマ」では、CとBの糖度が高い(表1)。
  • 上記、A~Dの4種類のかんしょを用いた焼き芋の消費者嗜好性調査(有効回答60人)の結果、CとBの評価が高く、購入意向が大きい(表2)。特に、しっとりの方が好きな消費者(しっとり派)のCとBに対する評価は高い。
  • 2018年9月に、2週間13°C で貯蔵した「べにはるか」をJAなめがた(現JAなめがたしおさい)の主要流通チャネルで試験販売し、購入した実需者(有効回答41人)にアンケートをした結果、通常の「べにはるか」と比較して、高い評価を得ており、購入意向は2割高まで24%、1割高まで90%である(表3)。
  • 以上から、かんしょ出荷の端境期である9月期においしい焼き芋を提供するためには、「ベニアズマ」を1年間13°C で貯蔵するよりも、8月中旬に収穫した「べにはるか」を11~13°C で2週間程度貯蔵して早期糖化させる方法を用いた商品の方が消費者や実需者の評価が高くなり、高価格販売の可能性があることが明らかになっている。

成果の活用面・留意点

  • 2018年及び2019年9月期にJAなめがたしおさいが行った実需者への試験販売では、「べにはるか」通常品と比較して、本方法を用いた「べにはるか」は1~2割高の価格で取引されている。
  • 本研究は、茨城県産の「べにはるか」と「ベニアズマ」を用いている。そのため他地域では、貯蔵温度や貯蔵期間を若干調整する必要がある。

具体的データ

表1 嗜好性調査に用いた焼き芋の糖度,表2 消費者の嗜好と購入意向,表3 低温貯蔵べにはるかに対する流通業者の購入意向

その他

  • 予算区分:交付金、28補正「経営体プロ」
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:河野恵伸、上西良廣、荒木田尚広(茨城県農総セ)、西中未央、中村善行、青木法明、河野隆徳(JAなめがたしおさい)、野原正幸(JAなめがたしおさい)
  • 発表論文等:河野ら(2019)農研機構研究報告食農ビジネス推進センター、3:15-26