飼料生産コントラクターの作業面積に応じた機械体系の選択

要約

飼料作物の収穫調製作業において、稼働面積が30~50haのとき汎用型飼料収穫機体系が選択され、費用は32,094~25,522円/10aである。60~110haでは高価だが作業効率の良いフォレージハーベスタと大型トラクタ等を組み合わせる体系が選択され、費用は28,393~20,305円/10aである。

  • キーワード:飼料生産コントラクター、収穫面積規模、機械選択、汎用型飼料収穫機、大型収穫機
  • 担当:本部・農業経営戦略部・経営計画ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

畜産農家から自給飼料生産のための作業を受託する外部組織としてのコントラクターの数は、都府県においても増加傾向にある。設立された組織が持続的に発展するには、適切な設備投資と機械の効率的な利用が不可欠である。飼料生産の現場に対して、想定される稼働面積に応じ、経済性を踏まえた最適な機械装備の組み合わせが提示される必要がある。
そこで本研究では、混合整数非線形計画法によるコントラクター経営計画モデルを構築し、飼料生産コントラクターにおける対象作物・事業規模に応じた最適な機械装備選択を具体的に提示する。

成果の内容・特徴

  • 機械体系はフォレージハーベスタと大型トラクタ、圧縮梱包・ラッピングマシンを組み合わせた大型体系が2種類(S1:195ps・4条刈、S2:125ps・3条刈)、汎用型飼料収穫機及び自走式ラッピングマシンを組み合わせた汎用体系が1種類(S3)とする(図1)。各体系は収穫機1台を中心とし、収穫調製に係る一連の作業に必要な作業機械・要員の組み合わせを1セットと数える。
  • 稼働面積はトウモロコシ15haと稲WCS15haの合計30haから開始し、以後各作物を5haずつ増加させ、合計230haまでとする。その他、シミュレーションの前提となる作業可能時間、人件費単価、作業効率等を表1に示す。
  • シミュレーションの結果、トラクタを収穫作業のみに使用するとき、稼働面積が30~50haの場合に最適な機械装備は汎用(S3)体系1セットで、費用は32,094~25,522円/10aである。60~90haでは大型3条刈(S2)体系1セット、100~110haでは大型4条刈(S1)1セットが最適な機械装備である。費用は60haでは28,393円/10aであるが、110haまで拡大すると20,305円/10aとなり、60ha規模と比較して28%低減する。機械体系1セットによる収穫規模の限界は110haである。そのため、120ha以上では作業効率の良い大型体系から先に選択され、メインとなる大型体系を補完するのに最適な機械体系が組み合わせられる。収穫費用は120haで23,828円/10a、220haで20,305円/10aであり、その差は15%である。費用は110haの整数倍の規模で最も安くなる(図2)。
  • 大型体系において堆肥散布等の他作業を受託し、収穫作業部門でのトラクタの費用負担割合が7割と5割に低下した場合、収穫面積に応じた最適な機械体系の種類・セット数はあまり変わらない。一方、10a当たり収穫費用は、大型体系が選択される60ha以上の大規模領域において、トラクタの費用負担割合が7割の場合は5~12%、5割の場合は9~15%の低減となる(図2)。コントラクター事業における受託作業の多角化の有効性が確認できる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果はコントラクターの設立や機械更新の際、実際の機械施設の導入計画を立てる場合の経営計画、経営収支と融資を受けた場合の返済計画策定の参考データとして活用できる。
  • トラクタの費用負担割合を変化させるシミュレーション分析において、収穫作業とその他の作業との作業競合はないものとする。
  • 本成果の分析結果の適用地域としては、都府県の平場地域を想定している。

具体的データ

図1 大型体系と汎用体系,表1 前提条件の設定,図2 収穫面積規模およびトラクタの費用負担割合による収穫費用と機械装備選択の変化

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2019~2020年度
  • 研究担当者:清水ゆかり、西村和志、恒川磯雄
  • 発表論文等:清水ら(2021)農業経済研究、93(1):印刷中