マメ科作物の粒大を倍加できる遺伝子の同定

要約

植物体および種子が約2倍に巨大化したケツルアズキ突然変異体から同定した原因遺伝子PPDはダイズの大粒化にも応用できる。

  • キーワード:マメ科作物、ダイズ、ケツルアズキ、大型化、大粒化
  • 担当:遺伝資源センター・植物多様性活用チーム
  • 代表連絡先:電話 029-838-7474
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ダイズやアズキは大粒種が高級品種として高値で取引されるため、大粒化は重要な育種目標である。しかし、一般に粒大は多数の遺伝子の集積効果によって決まるため、それを劇的に変化させる遺伝子はこれまで見つかっていない。粒大が約2倍異なる普通アズキと大納言アズキの間でも原因遺伝子座は多数あり、最も効果が強い遺伝子座でさえ粒大を約20%増加させる程度の効果しかもたない。
しかし、ガンマ線を照射したケツルアズキから得られた巨大化突然変異体は、種子や植物体が約2倍に巨大化する。この巨大化突然変異体の原因遺伝子を特定し、さらにこの遺伝子がダイズ等他のマメ科作物にも応用可能であることを明らかにすることが本研究の目的である。

成果の内容・特徴

  • ケツルアズキへのガンマ線照射によって得られた突然変異体は種子や植物体が通常のケツルアズキに比べて約2倍に巨大化する(図1、2)。
  • この変異体は巨大化するだけでなく、通常のケツルアズキよりも生育速度が早くなる。
  • 巨大化変異体は第8染色体上に存在するピーポッド遺伝子(PPD)の第6エキソンに8塩基の欠失を生じている。
  • RNA干渉によってダイズのPPD遺伝子の発現を抑制すると、ダイズの種子および植物体はともに巨大化する(図3、4)。

成果の活用面・留意点

  • 種子の大粒化はマメ科作物の付加価値を大きく高めることから、高価格帯の高級品種の育成やそれを介した6次産業化の促進に貢献できる。
  • PPD遺伝子の欠損個体は放射線等の突然変異原処理によって選抜できる。
  • ダイズ以外のマメ科作物においても、PPD遺伝子は広く保存されているため、PPD遺伝子の機能を抑制すれば巨大化させることができる。
  • 種子の巨大化は種子数を減少させるため、収量が大きく変化することはない。

具体的データ

図1. 突然変異により巨大化したケツルアズキ(左)と通常のケツルアズキ(右)?図2. 突然変異により巨大化したケツルアズキ種子(左)と通常のケツルアズキ種子(右)?図3. PPD遺伝子を抑制した形質転換ダイズ(左)と通常のダイズ(右)?図4. PPD遺伝子を抑制した形質転換ダイズ種子(左)と通常のダイズ種子(右)

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2011~2016年度
  • 研究担当者:内藤健、高橋有、平野久美、Bubpa Chaitieng、高木恭子、加賀秋人、友岡憲彦
  • 発表論文等:内藤ら(2017)Multiple organ gigantism caused by mutation in VmPPD gene in black gram (Vigna mungo). Breeding Science 67(2):151-158.