気象予報を含む全国日別1kmメッシュ農業気象データ作成・配信システム
要約
最長26日先までの予報を含む13種類の農業気象データを1980年から現在の翌年までについて提供する。データは約1kmのメッシュ単位で整備され、必要とする気象要素、地域、期間を任意に選択して取得できる。種々な栽培管理支援情報の作出に利用できる。
- キーワード: 特定向け気象予報、基準地域メッシュ、農業気象、日別値
- 担当: 農業環境変動研究センター・気候変動対応研究領域・温暖化適応策ユニット
- 代表連絡先: niaes_manual@ml.affrc.go.jp
- 分類: 過年度普及成果情報(2015)
背景・ねらい
近年の温暖化傾向を背景として、気象条件を考慮して作物を管理する必要性が増し、発育予測に基づく栽培管理や病害虫防除適期の提示、作付適期の設定、冷害や高温障害の予測に基づく対策など、栽培管理支援技術やアプリケーションの開発が盛んに進められている。これに伴い、湿度などアメダスでは非測定の気象データや気象の予報に対する需要が高まっている。そこで、気象予報を含む日別の農業気象データセットを全国について1kmメッシュで作成し、次世代の農業向け気象情報インフラとする。
成果の内容・特徴
- システムが保持するデータは、基準地域メッシュ(約1km×1km)を単位として全国を網羅する。日平均気温など一般的な気象要素に加え、耕地表面の温度推定に欠かせない下向き長波放射量や農業施設の雪害に深くかかわる積雪相当水量など、栽培管理支援情報の作成に役立つ13の気象要素からなり、1980年(一部2008年)以降現在の1年後までの期間について利用可能である(表1)。期間のうち現在から最長26日先までについては予報値である。特に、気温については、予報気温の確からしさとして予報値の標準偏差近似値も保持する。これを用いると出穂日の予測等、気温予報に基づく農業情報に信頼性情報を付加することができる。
- 日平均気温、日最高気温、日最低気温、降水量、日照時間、全天日射量については、2011年以降の日別平滑平年値も利用可能である。このデータは、気象庁の日別平滑平年値(地点別のデータ)とメッシュ平年値(月別のメッシュデータ)との両方に高く整合する。
- システムのデータは毎日更新される。現在の1日前の気象値は、最新のアメダス観測値他に基づいて更新され、予報値については、メソ数値予報モデル(MSM) GPV、全球数値予報モデル(GSM) GPV、異常天候早期警戒情報、1か月予報ガイダンスに基づいて更新される(図1)。
- 農研機構は、気象業務の許可を有し、このデータを特定向け気象予報としてオンデマンド配信する。利用者は、必要とする気象要素、地点/地域、日/期間のデータを表計算アプリのシート上にワンクリックで読み込んだり、栽培管理支援情報を作成するアプリケーションプログラムに取得させたりできる。
- このシステムの中核をなすプログラムは、職務作成プログラム(機-A24)として利用可能なので、事業体もしくは個人が同等のシステムを構築しメッシュ農業気象データを独自に生産することも可能である。インターネットを介した転送が不要となるので、より高速で安定した利用が可能となる。ただし、運用には気象資料の入手が必要である。また、データを自ら使用することは差し支えないが、第三者に継続して提供する場合は気象予報業務の許可を取得する必要がある。
普及のための参考情報
- 普及対象: 気象データの農業利用を行おうとする公設農業試験研究機関、教育機関、農業情報事業者、食品関連事業者、JA等
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等: 全都道府県の公設農業試験研究機関、10校程度の大学等教育機関、10社程度の農業情報事業者・食品関連事業者
- その他: 普及対象者には、利用目的を審査の上このデータの利用を認める。ただし、データを使用した結果や使用できなかった結果に対し農研機構は責任を負わない。データを第三者に譲渡することはできない。成果物の販売はできない。
具体的データ
その他
- 予算区分: 交付金、競争的資金(科研費、農食事業)、その他外部資金(SIP)
- 研究期間: 2010~2016年度
- 研究担当者: 大野宏之、佐々木華織、丸山篤志、吉田ひろえ、伏見栄利奈、中川博視
- 発表論文等:
1) 大野宏之ら(2016)生物と気象、16:71-79
2) 農研機構(2014)「メッシュ農業気象データ利用マニュアル」(2014年3月)
3) 大野(2011)職務作成プログラム「メッシュ農業気象データ作成システム」、機構-A24