トマト、さやえんどう、スイートピーの初期生育に影響する土壌中クロピラリド濃度

要約

供試した作物の中でトマト(ミニトマト)はクロピラリドに対する感受性が最も高く、土壌中クロピラリド濃度が1 μg/kg乾土以上で初期生育に影響が現れる。また、土壌中クロピラリド濃度が高いほど早くかつ複数の症状が発現する。

  • キーワード:クロピラリド、初期生育、症状、土壌中濃度、堆肥
  • 担当:農業環境変動研究センター・有害化学物質研究領域・有機化学物質ユニット
  • 代表連絡先: niaes_manual@ml.affrc.go.jp
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

海外で牧草や穀類に使用されている除草剤クロピラリドが含まれた輸入飼料を牛に給与すると、クロピラリドは牛ふん尿中に排せつされる。そのふん尿を原料とした堆肥の土壌への施用が原因と考えられる農作物の生育障害が発生しており、その課題を解決するための対策が早急に求められている。クロピラリドは、感受性の高い作物に対しては、極微量であっても生育に影響を生じさせる可能性があるため、土壌中クロピラリド濃度と作物の生育の関係を解明する必要がある。そこで、クロピラリドを添加した堆肥を混和した土壌でトマト、さやえんどう、スイートピーを栽培し、初期生育におけるクロピラリドへの応答を比較する。

成果の内容・特徴

  • 市販培養土(くみあいニッピ園芸培土1号)に、土壌中濃度が0、1、5、25μg/kg乾土となるようにクロピラリドを添加した堆肥を混和(培養土:堆肥=99:1、1t/10a施肥相当)する。播種14日後のトマト(ミニトマト「アイコ」)を定植、さやえんどう「あずみ野30日絹莢PMR」およびスイートピー「ロイヤルクリムソン」を播種し、28日間生育させる。栽培条件は人工気象室内、12時間日長、水は土壌の最大容水量50‐70%となるよう底面吸水で与える。各作物における栽培温度(明期‐暗期)はトマト(25°C‐20°C)、さやえんどう(20°C‐12°C)、スイートピー(18°C‐7°C)である。その結果、トマトでは1μg/kg乾土、スイートピーは5μg/kg乾土、さやえんどうは25μg/kg乾土で初期生育に影響が現れる。
  • 土壌中クロピラリド濃度とトマト初期生育への影響を経時的にみると、土壌中クロピラリド濃度が高いほど早くかつ複数の症状が発現する。土壌中濃度が25μg/kg乾土では定植後数日で胚軸の屈曲がみられ、その後、成長点や葉の変形、茎の肥大、側枝の異常伸長がみられる。5μg/kg乾土では定植1週間後、1μg/kg乾土では定植2週間後に影響が現れはじめ、葉の硬化や縮葉および葉軸のねじれがみられる(図1)。
  • トマトと同様にさやえんどうおよびスイートピーにおいても、土壌中クロピラリド濃度が高いほど早くかつ複数の症状が発現する。スイートピーでは5μg/kg乾土で葉の硬化、25μg/kg乾土で葉のカッピング(カップ状になること)や巻きひげの硬化、さやえんどうでは25μg/kg乾土で葉のカッピングが現れる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 各作物の初期生育における影響の程度は、個体、品種、栽培環境等によって異なる可能性がある。
  • 栽培初期にクロピラリドによる生育障害であるか否かを確認する際の参考になる。

具体的データ

図1 土壌中クロピラリド添加濃度とトマト(ミニトマト「アイコ」)の初期生育における症状との関係;図2 クロピラリドが混入した土壌で生育したスイートピー(左図)およびさやえんどう(右図)に現れる症状

その他