土壌中クロピラリドが作物の初期生育に及ぼす影響・データ集

要約

本データ集は、土壌中クロピラリドが野菜・花き(19品目29品種)の初期生育に及ぼす影響について画像を中心に示しており、野菜・花きの栽培初期にクロピラリドによる影響があるか否かの確認の参考として活用できる。

  • キーワード:クロピラリド、初期生育、生育障害、土壌中濃度、堆肥
  • 担当:農業環境変動研究センター・有害化学物質研究領域・有機化学物質ユニット
  • 代表連絡先: niaes_manual@ml.affrc.go.jp
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

海外で牧草や穀類に使用されている除草剤クロピラリドが含まれた輸入飼料を家畜に給与すると、クロピラリドはふん尿中に排せつされる。そのふん尿を原料とした堆肥を土壌に施用するとトマトやスイートピー等のクロピラリドに感受性の高い野菜や花きでは生育に影響が現れる可能性がある。農水省課長通知(30消安第2274等)「牛等の排泄物に由来する堆肥中のクロピラリドが原因と疑われる園芸作物等の生育障害の発生への対応について」では、農作物においてクロピラリドの影響が疑われる際は速やかに県や国等に報告するよう呼びかけており、栽培初期にクロピラリドによる影響の有無を確認することが重要である。クロピラリドへの感受性やその症状は作物毎に異なり、土壌中クロピラリド濃度に応じた作物の初期生育における影響を解明する必要がある。そこで、本研究では、クロピラリドを添加した堆肥を混和した土壌で野菜・花き(19品目29品種)を栽培し、初期生育におけるクロピラリドへの応答を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 市販培養土(くみあいニッピ園芸培土1号)に、土壌中濃度が低から高濃度(0、1、5、25μg/kg-DW)となるようにクロピラリドを添加した堆肥を混和(培養土:堆肥=99:1、1 t/10 a施用相当)し、ポットで野菜・花き(19品目29品種)を栽培した場合に、クロピラリドがこれらの作物の初期生育に及ぼす影響を濃度毎、経時的に示している(図1、2)。
  • 各作物のクロピラリドによる症状については、観察のポイントをクロピラリド無添加区と比較して解説しており、野菜・花きの栽培初期にクロピラリドによる影響があるか否かの確認の参考となる。
  • 野菜の症状についてナス「筑陽」を例にみると、土壌中クロピラリド濃度が低い(1μg/kg-DW)場合は明瞭な影響は確認できないが、土壌中濃度が中程度(5μg/kg-DW)では葉縁が表側に巻き、葉がわずかにカップ状となる。土壌中クロピラリド濃度が高い(25μg/kg-DW)と症状はさらに顕著となり、葉のカップ状の変形や縮葉、蕾ではがく片の先端にねじれが認められる(図3)。
  • 花きのクロピラリドの症状について輪ギク「精興の誠」を例にみると、土壌中クロピラリド濃度が中程度まで(1、5μg/kg-DW)は明瞭な影響は確認できないが、土壌中濃度が高い(25μg/kg-DW)と葉の萎縮や白化、芯止まり、側枝の伸長が認められる(図4)。
  • 本影響データ集は農研機構ウェブサイト内からダウンロードできる。https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/133546.html

普及のための参考情報

  • 普及対象:農林水産省等の行政機関を通じた公設試、農業生産団体等による指導に活用。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  • その他:症状の程度は品種・個体・栽培条件により変動する可能性がある。

具体的データ

図1 土壌中クロピラリドが野菜・花きの初期生育に及ぼす影響・データ集の表紙,図2 土壌中濃度に応じた作物の症状(ソラマメ「陵西一寸」の例),図3 野菜におけるクロピラリドの症状(ナス「筑陽」の例),図4 花きにおけるクロピラリドの症状(輪ギク「精興の誠」の例)

その他

  • 予算区分:競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2017年度
  • 研究担当者: 並木小百合、稲本勝彦、杉田浩一(宮崎県農業経営支援課)、郡司孝幸(前宮崎県総農試)、起汐一広(宮崎県総農試)、福田武美(前宮崎県総農試)、清家伸康
  • 発表論文等: