日本全国1km地域気候予測シナリオデータセット(農研機構地域気候シナリオ2017)

要約

わが国の気候変動の影響評価や適応計画の策定に広く利用可能な、新たな気候シナリオである。5つの全球気候モデルの出力値をバイアス補正、高解像度化し、気温・降水量に加えて日射量、相対湿度、地上風速を含み、日々の変動や気候の年々変動が過少評価されやすい点が改善されている。

  • キーワード:気候変動予測情報、影響評価、適応計画、バイアス補正、農業利用
  • 担当:農業環境変動研究センター・気候変動対応研究領域・影響予測ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-8240
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

気候変動を予測する全球気候モデル(GCM)の出力値は、空間解像度が100~300kmと粗いため、日本国内を対象とする影響評価や適応計画の策定には、GCM出力値を高解像度化した気候シナリオを利用する。農業を含む幅広い影響評価では、気温、降水量以外の気候要素を含み、将来予測の不確実性を評価するために複数のGCM出力値に対応した気候シナリオが求められる。またGCM出力値は現実の値(観測統計値)に対して誤差(バイアス)を持つため、その補正が必要である。従来、多くの影響分野が共通的に利用する気候シナリオは、GCM出力の期間平均値を観測平均値と合致させるバイアス補正法(平均値補正)を適用して作成する場合が多かった。しかし、一般にGCM出力値は日々の変動や年々変動が観測統計値に比べて小さいため、平均値補正のみの気候シナリオを用いた場合、その影響も過少評価されやすい問題がある。
そこで多くの分野で利用可能で、かつ年々変動の大きさの再現性を向上させるために、平均値に加え分散(標準偏差)を観測統計値に合致させるバイアス補正法(正規分布型スケーリング法)を適用した新たな気候シナリオとして、「日本全国1km地域気候予測シナリオデータセット(農研機構地域気候シナリオ2017)」を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本データセットは、5種類のGCM出力値を日本域で1kmメッシュに高解像度化したものであり、要素として日平均・日最高・日最低気温、日降水量、日積算日射量、日平均相対湿度、日平均地上風速を含む(表1)。
  • 気温については、バイアス補正前のGCM出力値における一定期間の昇温量を補正後も維持するバイアス補正を行っている(図1左)。つまり、本データセットにおける昇温量は5つのGCM出力値毎にそれぞれ、期間平均値はおおむね一致し、また年々変動の大きさは拡大されている。
  • 日降水量のGCM出力値は概して、観測統計値に比べて過少傾向にあるが、本データセットは平均値に加え分散を用いた補正を行っているため、GCMでは再現しにくいとされる年最大日降水量のような強い降水量についても、観測統計値に近づくように改善されている(図1右)。
  • 本データセットは、GCM間の出力値のばらつきや、出力値の年々変動に起因する気候シナリオの不確実性を考慮した、高解像度の影響評価に利用できる(図2)。
  • 本データセットは、コンピュータの機種やOSに依存しないバイナリ形式の一種であるNetCDF形式で作成されている。またGCM予測値に対する補正の基準となる観測統計値として「農研機構メッシュ農業気象データシステム」の過去値を用いているため、空間解像度やデータ書式も当該システムと同一であり、公開されている同システムの参考プログラムや解析方法が準用できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:環境省・農林水産省等「地域適応コンソーシアム事業」(統一気候シナリオの一つとして利用中)、農林水産省「農林水産分野における地域気候変動適応推進委託事業」および環境研究総合推進費戦略的研究開発領域課題(S-18)(利用予定)。このほか、気候変動適応法に基づく適応計画の策定を行う都道府県関係部局および公設試(農業試験研究や環境研究等)。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  • 利用方法:現在は「農研機構メッシュ農業気象データシステム」に利用目的を明記して申請する。申請者の所属や利用目的によっては、農研機構の職務作成プログラムの利用申請が必要となる。2020年4月以降は、文部科学省「データ統合・解析システム」および国立環境研究所気候変動適応センター(CCCA)からも、データツールや利用マニュアル等とセットで配信予定。
  • 利用例と留意点:本気候データセットは、都道府県単位での影響予測マップの描画利用に適している。また、複数のGCM出力値から作成した20年程度の毎年の気候シナリオ値を使用して影響予測を行い、その結果を、例えば図2右の出現分位(箱ひげ)図のように、予測の不確実性を含めて示すことが望ましい。

具体的データ

表1 「農研機構地域気候シナリオ2017」の諸元,図1 (左)近未来期間(2031~2050年)における年平均日最高気温の予測値を日本域で平均し、基準期間(1981~2000年)からの昇温量(°C)として示す。(右)基準期間における年最大日降水量の出現分位(パーセンタイル値)を示す箱ひげ図,図2 本データセットの利用例

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(温暖化適応・異常気象対応)、その他外部資金(気候変動適応研究推進、地域適応コンソーシアム事業)
  • 研究期間:2015~2019年度
  • 研究担当者:西森基貴、石郷岡康史、桑形恒男、滝本貴弘、遠藤伸彦
  • 発表論文等:
    • 西森ら(2019)シミュレーション、38:150-154
    • 農研機構(2019)職務作成プログラム(データベース)「日本全国1km地域気候予測シナリオデータセット」、機構-X08