飼料及び堆肥に残留する除草剤(クロピラリド)の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル(第2版)

要約

クロピラリドが原因と疑われる農作物の生育障害の発生防止策と、発生した場合の対処方法を記載した総合対策マニュアルである。行政機関を通じた公設試、農業生産団体等による堆肥生産者および堆肥利用者に対する指導に活用できる。

  • キーワード:クロピラリド、生育障害、堆肥、生物検定法、分析法
  • 担当:農業環境変動研究センター・有害化学物質研究領域・有機化学物質ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

海外で牧草や穀類に使用されている除草剤クロピラリドが含まれた輸入飼料を家畜に給与すると、クロピラリドはふん尿中に排せつされる。そのふん尿を原料とした堆肥を土壌に施用すると、トマトやスイートピー等のクロピラリドに感受性の高い野菜や花きでは生育に影響が現れる可能性がある。2000年代後半に国内でクロピラリドが原因と疑われる農作物の生育障害が発生したため、農研機構畜産草地研究所らが主体となり、「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」(以下「マニュアル」と略記)初版を公開した。しかし、2010年代後半に再びクロピラリドが原因と疑われる農作物の生育障害が発生したため、農作物のクロピラリド耐性の新たな評価・再評価や、定量下限値を下げた堆肥分析方法の開発等を行い、マニュアル(第2版)として公開する。

成果の内容・特徴

  • 本マニュアルは、クロピラリドに関する諸性質、生物検定法、残留分析法、堆肥利用者のための対策マニュアル、および、堆肥生産者のための対策マニュアル、で構成される(図1)。
  • クロピラリドに関する諸性質については、新たに取得した土壌中半減期の実測値、並びに肉牛の給餌から排泄、堆肥化およびほ場への施用におけるクロピラリドのマスバランス等を示している。さらに、ダリア、キク、マリーゴールドのクロピラリド耐性が極弱であることを見出すなど、新たに7作物について耐性を評価し、6作物について耐性を変更している(表1)。
  • 生物検定法については改定を行っていないが、残留分析法については、定量下限値を従来よりも1/5下げた新たな分析法を開発し、分析手順の詳細を示している(図2)。なお本分析法は、肥料分析の公定法である肥料等試験法(2020)に掲載されている。
  • 堆肥利用者および堆肥生産者のための対策マニュアルについては、農水省課長通知(2消安第3552号等)「牛等の排泄物に由来する堆肥中のクロピラリドが原因と疑われる園芸作物等の生育障害の発生への対応について(令和2年11月12日最終改正)」(以下、「改正課長通知」と略記)に準じ、原材料に関する情報伝達や、クロピラリド含有の確認のための生物検定法の活用だけではなく、クロピラリドが原因と疑われる生育障害の発生を確認した場合における都道府県への報告等について示している。
  • 本マニュアルは、農研機構ウェブサイト内からダウンロードできる。
    https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/niaes/manual/137026.html

普及のための参考情報

  • 普及対象:農林水産省等の行政機関を通じた公設試、農業生産団体等による指導に活用。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国

具体的データ

図1 公開中のマニュアル(第2版)表紙と目次,表1 農作物のクロピラリド耐性(第2版で新たに評価、再評価を行い初版から変更があった作物のみ抜粋),図2 新たに開発した堆肥中クロピラリド分析法のフロー

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)、その他外部資金(レギュラトリーサイエンス)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:
    清家伸康、渡邉栄喜、並木小百合、阿部佳之、小島陽一郎、神谷裕子、樋口幹人、稲本勝彦、森川クラウジオ健治、福田武美(宮崎県総農試)、杉田浩一(宮崎県農業経営支援課)、郡司孝幸(前宮崎県総農試)、起汐一広(宮崎県児湯農林振興局)、永井浩幸(宮崎県総農試)、有簾隆男(宮崎県総農試)
  • 発表論文等: