サルモネラ経口感染に対して有意に感染防御を誘導する抗原

要約

サルモネラ感染防御に関わるタンパク質を国内外の研究機関に先駆けて同定し、安全で高機能なワクチンに利用する。

  • キーワード:サルモネラ、ワクチン、感染防御、家畜・家きん、人獣共通感染症
  • 担当:動物衛生研究部門・細菌・寄生虫研究領域・細胞内寄生菌ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7791
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

サルモネラ症は、ヒトおよび家畜・家きんが発症する人獣共通感染症の一つであり、先進国、開発途上国を問わず発生している。畜産業におけるサルモネラ症の発生は経済的損失が極めて大きく、家畜・家きんに対する感染予防対策は重要視されている。しかしながら家畜・家きんのサルモネラ症は完全には抑えられていない。本研究は、安全で高機能な新規の成分ワクチンの開発を成果目標とし、感染防御に関与するタンパク質(抗原)を同定、新規ワクチンの開発に寄与させる。

成果の内容・特徴

  • マクロファージファゴソーム内様環境培地にて産生されたタンパク質群の中から生化学的手法、細胞生物学的手法及びin vivo実験などを用いて、感染防御に関与するタンパク質(抗原)を同定し、新規ワクチンの開発に寄与させる。
  • サルモネラ分泌タンパク質Xおよび死菌を免疫したマウスは、サルモネラ感染後、非免疫のマウスに比べて、元気消失、毛艶の悪化が改善される。
  • サルモネラ分泌タンパク質Xおよび死菌で免疫したマウスは、サルモネラ経口感染において有意に感染防御を示す(図)。

成果の活用面・留意点

  • 国内外の研究機関に先駆けてサルモネラ経口感染に対する高機能な新規ワクチンを開発することができる。
  • 様々な家畜・家きんに対する新規のサルモネラワクチンとして利用が期待できる。
  • サルモネラ感染防御に関与するサルモネラ分泌タンパク質Xは大腸菌から組換えタンパク質として大量精製ができる。
  • 家畜・家きんに対する新規防御抗原による副反応の有無を検証する必要がある。
  • サルモネラ症によって引き起こされる下痢に対して抑制可能かを検証する必要がある。

具体的データ

図 組換えサルモネラタンパク質Xと死菌免疫マウスによるサルモネラ感染防御

その他

  • 予算区分:委託プロ(薬剤耐性)
  • 研究期間:2017~2018年度
  • 研究担当者:江口正浩、Marta ELSHEIMER MATULOVA、枡鏡優美子、小川洋介、下地善弘
  • 発表論文等:江口ら、特願(2018年7月5日)