口蹄疫ウイルスO/JPN/2000弱毒株は豚に水疱病変を形成しない
要約
口蹄疫ウイルスO/JPN/2000弱毒株を豚に経口接種した場合、感染はするものの、発熱以外の症状を示さず、水疱病変を形成しない。また鼻汁や唾液へのウイルス排泄もみられない。
- キーワード:口蹄疫、口蹄疫ウイルス、豚、病理組織学、免疫組織化学
- 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・海外病ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-7713
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
口蹄疫のワクチンは、発症を抑えられるものの、ウイルスの感染や排泄を抑えられないことが知られている。この問題の解決に向けて新規ワクチンの開発が望まれているが、そのためにはウイルスの弱毒化とその機序、そして弱毒化したウイルスの病原性にかかる知見を蓄積する必要がある。2000年に宮崎県で口蹄疫が発生した際に分離されたウイルスO/JPN/2000株は、培養細胞で継代を数回繰り返すことで弱毒化する性質を持っている。本研究は、この性質を利用し、病原性の低くなったウイルスを用いた豚の感染実験を通じて新規ワクチン開発のために基礎的データ収集を行うことを目的としている。
成果の内容・特徴
- O/JPN/2000弱毒株に感染した豚からは鼻汁や唾液へのウイルス排泄は認められない(表1)。
- O/JPN/2000弱毒株に感染した豚は発熱以外の症状を示さず、水疱病変を形成しない(表1、図1、2)。
- 経口接種1日後に足の蹄冠部や蹄球部の皮膚にみられたウイルス抗原は接種3日、6日後において減弱、消失する(図1、2)。感染しても十分に増殖することが出来ずに水疱病変形成に至らないことが示唆される。
成果の活用面・留意点
- 得られたデータは口蹄疫防圧のための新規ワクチン開発に活用できる。
具体的データ

その他
- 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
- 研究期間:2013~2017年度
- 研究担当者:山田学、深井克彦、森岡一樹、西達也、山添麗子、北野理恵、嶋田伸明、吉田和生、菅野徹、坂本研一、山川睦
- 発表論文等:Yamada M. et al. (2018) J. Vet. Med. Sci. 80(11):1669-1675