口蹄疫ウイルス感染豚におけるウイルスの局在部位

要約

口蹄疫ウイルスO/JPN/2010株は豚の舌の表側の有棘細胞に感染して水疱病変や潰瘍病変を形成するが、裏側には感染せず、病変を形成しない。診断材料にはウイルスが多量に局在している水疱上皮が適している。

  • キーワード:口蹄疫、口蹄疫ウイルス、豚、病理組織学、免疫組織化学
  • 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・海外病ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7713
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

口蹄疫との類似の症状を示す感染症は複数あり、確定診断を行う上で鑑別診断を行う必要があるが、口蹄疫の初期病変を裏付ける病理組織学的特徴についての報告は少なく、鑑別のために必要な科学的根拠が乏しい。本研究は2010年の宮崎県での口蹄疫発生の際に分離されたウイルスO/JPN/2010株を用い、豚における感染初期の病態を解析し、口蹄疫ウイルスがどこに感染してどのような病変を形成するか、ウイルスが多量に含まれる部位はどこかを明らかにして、口蹄疫診断のための有用な知見を得ることを目的としている。

成果の内容・特徴

  • O/JPN/2010株は豚への経口接種1日後に舌、扁桃、咽喉頭部の粘膜上皮に感染する。
  • O/JPN/2010株は豚の舌の表側の有棘細胞に感染して水疱病変や潰瘍病変を形成するが(図1、2)、舌の裏側には感染せず、病変もみられない。
  • 舌の表側の粘膜上皮であっても、舌乳頭の上皮(図3)や基底細胞には感染しない。
  • O/JPN/2010株は豚への経口接種1日後に、すでに蹄冠部や蹄球部皮膚に到達して、表皮の有棘細胞に感染している。
  • 蹄冠部や蹄球部皮膚の水疱上皮には多量のウイルス抗原が認められるが(図4)、水疱が破れた後の潰瘍病変部にはウイルス抗原は少ない。

成果の活用面・留意点

  • O/JPN/2010株の豚における感染初期の病態は口蹄疫の早期診断に有用である。
  • 豚の口蹄疫における特徴的な舌の病変分布は他疾病との類症鑑別の際の重要な所見となる。
  • 口蹄疫を的確に診断するためには、水疱上皮を材料として採取すべきである。

具体的データ

図1 豚. FMDV O/JPN/2010株経口接種3日目,図2 豚. FMDV O/JPN/2010株経口接種3日目. 図1の舌の病変の病理組織,図3 豚.FMDV O/JPN/2010株経口接種3日目.舌上皮,図4 豚.FMDV O/JPN/2010株経口接種3日目.足の副蹄の蹄冠部皮膚

その他

  • 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
  • 研究期間:2013~2017年度
  • 研究担当者:山田学、深井克彦、森岡一樹、西達也、山添麗子、北野理恵、嶋田伸明、
  • 吉田和生、菅野徹、坂本研一、山川睦
  • 発表論文等:Yamada M. et al. (2018) J. Vet. Med. Sci. 80(4):689-700