ヒト由来H7N9亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスはニワトリとアヒルに対する病原性が異なる

要約

中国でヒト感染を起こしたH7N9亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスは、ニワトリに対して高い病原性を示し、感染した個体をほぼ死亡させるが、アヒルに対しては感染し難いうえに感染してもほとんど増殖せず感染個体を死亡させない。

  • キーワード:H7N9亜型、高病原性鳥インフルエンザウイルス、ヒト分離株、ニワトリ、アヒル
  • 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・インフルエンザユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7738
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2013年の3月に中国でH7N9亜型の低病原性鳥インフルエンザウイルスによるヒトへの感染が最初に報告されてから、2017年9月までにこのウイルスは中国で5回の流行を起こしている。5回目の流行では、H7N9亜型ウイルスのヘマグルチンニンタンパク質の開裂部位に連続した塩基性アミノ酸が挿入された高病原性ウイルスが出現した。これまでH7N9亜型鳥インフルエンザウイルスは、中国ではニワトリや生鳥市場の環境検体から主に分離されているが、アヒルからの分離は極めて少ない。本研究では、ヒトから分離されたH7N9亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)を中国や台湾の協力機関から導入し、ニワトリ及びアヒルを用いた感染実験を行い、これらの家禽の本ウイルスに対する感染リスクを評価することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 中国の広東省でヒトから分離されたH7N9亜型のHPAIV (A/Guangdong/17SF003/2016;広東株)と台湾でヒトから分離された同亜型のHPAIV(A/Taiwan/1/2017;台湾株)を、ニワトリにそれぞれ等量(106 EID50)経鼻接種した場合、接種後5日目で全例死亡する(図)。
  • 広東株の50%ニワトリ致死量は103.3 EID50/羽、台湾株の50%ニワトリ致死量は104.7 EID50/羽であり、広東株は台湾株よりも少ないウイルス量でニワトリを死亡させる(図)。
  • 広東株と台湾株を、アヒルにそれぞれ等量(106 EID50)経鼻接種した場合、広東株は4羽中2羽、台湾株は4羽中1羽でウイルス排泄が認められたが、アヒルは全例症状を示さず、接種2週後まで生存する(図)。

成果の活用面・留意点

  • H7N9亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスのアヒルへの感染性が低いことから、野生の同じカモ類の鳥によって拡散される可能性は低いと推測される。
  • 中国から違法に持ち込まれた家禽産物からH7N3亜型HPAIVが分離されていることから、遺伝子再集合などによるウイルスの進化とカモ類に対する感染性の変化に注視する必要がある。

具体的データ

図 等量のウイルス(106 EID50)をニワトリとアヒルに感染させた時の死亡率とニワトリに対する50%致死ウイルス量

その他

  • 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
  • 研究期間:2017年度
  • 研究担当者:谷川太一朗、内田裕子、竹前喜洋、常國良太、峯淳貴、Ming-Tsan Liu(CDC, Taiwan)、Ji-Rong Yang(CDC,Taiwan)、白倉雅之(感染研)、渡邉真治(感染研)、小田切孝人(感染研)、西藤岳彦
  • 発表論文等:Tanikawa T. et al. (2018) Arch. Virol. 164(2):535-545