ニューカッスル病ウイルスの免疫組織化学的検出法
要約
免疫組織化学(IHC)によるニューカッスル病(ND)ウイルスの新たな検出法である。本手法は、NDウイルスの病態解析研究や補助診断技術として利用できる。
- キーワード:ニューカッスル病、家禽、野鳥、病理、免疫組織化学
- 担当:動物衛生研究部門・病態研究領域・病理ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-7713
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
NDはNDウイルス(パラミクソウイルス科トリアブラウイルス1)を原因とする家禽の監視伝染病である。NDウイルスは家禽のほか、ドバトなど多くの野鳥種に感染する。NDウイルスは、鶏に対する病原性によって弱毒~強毒ウイルスに分類される。強毒ウイルスによるNDは流行性の高い致死的な感染症であるため、高病原性鳥インフルエンザとの鑑別が必要である。
病理検査で用いるIHCは、感染動物の体内におけるウイルス感染細胞の同定や病理発生機構の解析に有効な手法であるが、これまで同手法によるNDウイルスの検出はほとんど行われていなかった。本研究は、NDに関する病態解析研究や、高病原性鳥インフルエンザとの鑑別診断に応用できる補助診断技術として利用するために、IHCによるNDウイルス検出法を開発することを目的としている。
成果の内容・特徴
- 日本で近年分離されたNDウイルスに対するIgGモノクローナル抗体を分泌するマウス由来ハイブリドーマ細胞を作出する。作出した細胞が産生する14種の抗体はELISA法においてNDウイルス抗原を検出する。
- 実験感染によって作製したNDウイルス感染鶏の病理検査用試料を用いて、14種の抗体をIHCで評価すると、3種(22C483、2E5-11、8E9A9)のみがIHCによりNDウイルスを検出できる(図)。3種のうち、IHCにおいて最もウイルス検出感度が高い抗体は22C483である。
- ウエスタンブロットやカイコ発現組換えNDウイルスタンパク質を用いた解析によると、22C483が認識するNDウイルスタンパク質は核タンパク質である。
- 本研究で作出された22C483をIHCに用いることで、NDウイルスを高感度に検出することが可能である。
成果の活用面・留意点
- マウスモノクローナル抗体22C483を用いたIHCによるNDウイルス検出法は、NDに関する病態解析研究や補助診断技術として利用できる。
- 22C483を用いたIHCでは、ウイルス感染細胞の細胞質が陽性となる。22C483は神経細胞核に非特異反応を生じる場合があるが、蛋白分解酵素を用いた前処理により非特異反応を消失させることができる。
- 本研究で作製した抗体は全国の家畜保健衛生所や学術機関に分与することができる。NDが疑われる家禽や野鳥の病性鑑定や、NDの試験研究などにおいて、IHCによるNDウイルスの検出が可能となる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2016~2018年度
- 研究担当者:山本佑、清水慎也、広田次郎、黒川葵、真瀬昌司
- 発表論文等:Yamamoto Y. et al. (2019) Jpn. Agr. Res. Q. 53(2):135-141