牛用多機能腟内センサによるリアルタイム発情検知技術

要約

腟内温度と腟内電気伝導度を連続測定可能な多機能腟内センサを用い、人工知能により解析することで、高感度・高精度かつリアルタイムに発情を検知することができる。

  • キーワード:腟内温度、腟内電気伝導度、ウェアラブルセンサ、機械学習、発情検知
  • 担当:動物衛生研究部門・病態研究領域・繁殖障害ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7713
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

牛の人工授精による受胎率は過去20年間で10~15%低下しており、その主な原因として発情徴候の不明瞭化による不適期人工授精の増加が考えられている。発情徴候が不明瞭化した個体や発情行動が制限される繋ぎ飼育下の個体において、正確に発情を検知することができれば、効率的な繁殖管理が可能となる。そこで、発情周期に伴って変化する腟内温度と腟内電気伝導度を連続的に測定可能な多機能腟内センサを用い、人工知能(機械学習法)により解析することで、高感度・高精度かつリアルタイムに発情を検知する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 多機能腟内センサを腟内に留置し、15分間隔で腟内温度と腟内電気伝導度を測定する(図1)。
  • 多機能腟内センサは、発情周期に伴う腟内温度と腟内電気伝導度の変化を捉えることが可能である(図2)。
  • センサデータは携帯電話回線やインターネット回線を利用してクラウド上に収集し、管理することができる。
  • 腟内温度と腟内電気伝導度の変化を人工知能(機械学習法)により解析すると、感度・精度ともに90%以上でリアルタイムに発情を検知できる(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • 本法は自動で取得される腟内温度と腟内電気伝導度データを用いることから、発情発見に要する観察時間が大幅に短縮でき、繁殖管理の省力化に貢献する。
  • 本法は発情周期に伴って生理学的に変化する腟内温度と腟内電気伝導度を捉える手法であることから、行動が制限される繋ぎ飼育下においても利用可能である。
  • 本法はリアルタイムで発情を検知できる方法であり、センサデバイスや解析法の改善を図ることで高確率に受胎する人工授精のタイミングを判定する技術としての利用が期待できる。
  • 本多機能腟内センサの試験目的外での使用には、動物用医療機器としての承認を受ける必要が有る。

具体的データ

図1 多機能腟内センサ,図2 多機能腟内センサを用いた発情検知の流れ

その他

  • 予算区分:その他外部資金(28補正「AIプロ」、資金提供型共同研究)
  • 研究期間:2017~2018年度
  • 研究担当者:吉岡耕治、檜垣彰吾、三浦亮太朗(日獣大)、岡田浩尚(産総研)、Andersson L Mattias(産総研)
  • 発表論文等:
    • Higaki S. et al. (2019) Theriogenology 123:90-99
    • 檜垣、吉岡(2018)家畜診療、65:427-442