農場周辺の水辺の存在は鳥インフルエンザ発生のリスクとなる
要約
2014年以降の国内における高病原性鳥インフルエンザは、周辺に池や川など渡り鳥が飛来する水辺がある農場での発生リスクが高くなっている。
- キーワード:鳥インフルエンザ、リスク、野鳥、水辺、ケースコントロール研究
- 担当:動物衛生研究部門・ウイルス・疫学研究領域・疫学ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-7713
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
国内における近年の高病原性鳥インフルエンザの発生については、疫学調査及びウイルス遺伝子解析の結果、渡り鳥によりウイルスが国内へ持ち込まれて起こった可能性が高いと考えられている。このため、農場周辺に、渡り鳥が飛来するような池や川などが存在すると、農場へのウイルスの侵入リスクが高まるものと推測される。そこで本研究では、統計的手法を用いて、農場周辺の池や川の存在が鳥インフルエンザの発生に与える影響について明らかにする。
成果の内容・特徴
- 本研究では、国内で79年ぶりに高病原性鳥インフルエンザが発生した2004年にまでさかのぼり、同病の発生があった年について、秋から翌春にかけての発生シーズン毎に、発生農場とその周辺の非発生農場を抽出して農場周辺の水辺の有無を比較している。
- 2011年までの発生では、農場周辺の水辺の有無と発生の関連は見られなかったが、2014年以降の発生(2014-2015年と2016-2017年)では、鶏舎から約20~100メートルの範囲に水辺のある農場で発生率が高い(図)。このことは、農場近隣に池や川があることが、鳥インフルエンザの発生リスクを高くしている可能性を示す。
成果の活用面・留意点
- 2011年の発生以降、飼養衛生管理基準の改正により農場で実施するべきウイルス侵入防止対策が強化され、人や車両等の要因による侵入リスクが低減した結果、近年は、農場周辺の水辺のリスクが顕在化した可能性がある。
- 近隣に池や川などのある農場では、侵入防止対策に特に留意する必要がある。
- リスクが認められた鶏舎から水辺までの距離については、過去の発生データを解析して得られたものであるため、100メートル以上離れている池や川のリスクが低いことを示すものではないことに注意する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2017~2018年度
- 研究担当者:清水友美子、早山陽子、山本健久、村藤義訓、筒井俊之
- 発表論文等:Shimizu Y. et al. (2018) Sci Rep. 8:3306 doi:10.1038/s41598-018-21695-1