迅速かつ高感度に口蹄疫ウイルスの検出が可能な銀増幅イムノクロマトキットの開発

要約

開発した全7タイプの口蹄疫ウイルスの検出が可能なキットは、銀増幅法により感度が向上し、検体処理液の改良により、検体中に牛の唾液が大量に混入した際に見られるイムノクロマト反応阻害を抑制し、口蹄疫の好発病変部位である舌や口腔内の病変部材料に対して高い検査精度を示す。

  • キーワード:口蹄疫、抗原検出、特異抗体、イムノクロマト、唾液
  • 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・口蹄疫ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7895
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

伝染力の強い口蹄疫の流行を防ぐためには、発生時の迅速な防疫対策が重要であるため、発生現場での一次診断法の活用が期待されるが、従来のイムノクロマト法では検出感度が十分ではない。また、従来法では口蹄疫の好発病変形成部位である舌や口腔内の病変部材料に対して、混入が懸念される唾液により、イムノクロマトの反応阻害が生じることが明らかとなっている。
本研究開発では、多様性のある全7タイプの口蹄疫ウイルスの検出を目的とし、7タイプ間で共通の部位に高い特異性を示す抗体を用い、高いバイオセキュリティーを求められる口蹄疫の発生現場での使用およびキットの高感度化を目的として、特別な機器を必要としない銀増幅イムノクロマトデバイスを採用している。また、検体処理液に添加する界面活性剤を最適化し、検体への牛唾液混入によるイムノクロマト反応阻害を抑えることに成功している。

成果の内容・特徴

  • 開発した口蹄疫ウイルス検出銀増幅イムノクロマトキットは、特別な機器を必要とせず、野外で使用可能である(図1)。
  • 本キットは、7タイプの口蹄疫ウイルスを検出可能で、海外市販品と比較して高い検出感度を示す(表1)。
  • 開発した検体処理液は牛唾液の混入によるイムノクロマト反応の阻害を解消することに成功している(図2)。従って海外市販品に対して、野外検体を用いた場合には2の成果の検出成績以上の効果が期待される。
  • 社会的インフラ整備の不充分な国や国土が広大な国などへの普及が見込まれ、海外の口蹄疫発生国で活用されることにより、我が国への口蹄疫侵入リスクを低することが期待される。

普及のための参考情報

  • 普及対象:都道府県の家畜防疫員、農研機構、海外の口蹄疫診断機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:国内の41都道府県で650本が普及の予定。

具体的データ

図1、口蹄疫抗原検出イムノクロマトキットの概要,表1、開発品と海外市販品の検出成績,図3、開発した検体処理液による
牛唾液に起因する反応阻害の解消

その他

  • 予算区分:交付金、競走的資金(イノベ創出強化)、その他外部資金(農林水産業 口蹄疫簡易診断キット実用化促進事業、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業)
  • 研究期間:2008~2018年度
  • 研究担当者:森岡一樹、吉田和生、深井克彦、西達也、山田学、山川睦、松本貴之(日本ハム)、竹内江里(日本ハム)、浦山佳那(日本ハム)、中村健太郎(富士フイルム)、和田淳彦(富士フイルム)、牧野快彦(富士フイルム)
  • 発表論文等:
    • 森岡(2019)畜産技術、771:23-25
    • Morioka K. et al. (2019) J. Virol. Methods 275:113736
    • 竹内ら「体液による抗原抗体反応阻害を防止する物質」特許第6601932号(2019年10月18日)
    • 農林水産省(2019)「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」(2019年9月11日)