異種間ロタウイルスにおける遺伝子組換えの発見

要約

長崎県で検出された12株の豚ロタウイルスHの全ゲノム解析を実施した結果、過去に検出された株と遺伝学的に異なることを明らかにする。また、一部のウイルス株のNSP3遺伝子は別種の豚ロタウイルスCとの遺伝子組換えにより生じたことを世界で初めて発見する。

  • キーワード:豚ロタウイルスH、豚ロタウイルスC、全ゲノム解析、NSP3遺伝子、遺伝子組換え
  • 担当:動物衛生研究部門・ウイルス・疫学研究領域
  • 代表連絡先:電話 029-838-7895
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ロタウイルスH(RVH)はこれまでにヒト、豚で検出されている。我が国における豚RVHの発生は1990年代に初めて確認されて以来、不明のままである。しかしながら、近年長崎県の6農場で12株の豚RVHが検出された。本研究では、これらの豚RVH株について全ゲノム解析を実施し、国内外における他のRVH複数株と配列を比較して、近年の豚RVH株の遺伝学的特徴を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 2013年から2015年に検出された豚RVH株は1990年代に検出された豚RVH株と遺伝学的に大きく異なっている。
  • 非構造蛋白質の1つをコードするNSP3遺伝子において、12株の中で通常の塩基数(926塩基)より長い塩基数(1416塩基)を持つ株(長鎖型)の存在を確認する。
  • その長鎖型のNSP3遺伝子は、通常のNSP3遺伝子の3'末端部に別種の豚ロタウイルスC(RVC)由来のNSP3遺伝子の部分配列が挿入する遺伝子組換えによって生じたことを示す(図)。

成果の活用面・留意点

  • ロタウイルスの遺伝子解析を行う際には、全ゲノムを対象に実施する重要性を示す。
  • ロタウイルスの進化機構において、遺伝子組換えは多様性を獲得するための1つの手段である。
  • ロタウイルスは異種間でも遺伝子組換えを起こすことを念頭に置く必要がある。

具体的データ

図 遺伝子組換えによる長鎖型NSP3遺伝子を有する豚RVH株の出現

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2017~2018年度
  • 研究担当者:鈴木 亨、井上大輔 (長崎県)
  • 発表論文等:
    • Suzuki T & Inoue D. (2018) J. Gen. Virol. 99:1582-1589.