26年ぶりに国内発生した豚熱の分離ウイルスの病原性
要約
国内で26年ぶりに発生した豚熱(CSF)の病原ウイルスは豚に発熱や白血球減少を引き起こすものの、強毒株と比べ病原性は低い。また、ウイルスは分泌・排泄物中に感染後最低2週間は排泄され、同居豚へも伝播する。抗体はウイルス接種あるいは同居後2週間以降に検出される。
- キーワード:豚熱ウイルス(CSFV)、2018年分離株、感染試験、病原性
- 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・アフリカ豚熱ユニット
- 代表連絡先:電話 042-321-1441
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
CSFは豚やいのししを死に至らしめる悪性伝染病である。国内では1992年の熊本での発生を最後に清浄化が成し遂げられていたが、2018年9月に岐阜県において26年ぶりに発生が確認された。CSFウイルスには急性の症状を引き起こす強毒株から慢性の症状を引き起こす低病原性株まで様々な病原性を示す株が存在することが報告されている。そこで、本研究では、国内において26年ぶりに発生したCSF発生農場かの飼養豚から分離したCSFウイルス(JPN/1/2018株)および既知の強毒株(ALD株)を豚に接種し、その症状および特徴を比較する。
成果の内容・特徴
- JPN/1/2018株を接種および同居した豚は強毒株接種豚と同様に40°Cを超える発熱および白血球減少(10,000個/μl以下)示すものの、臨床症状は強毒株を接種した豚より弱く、軽度の活力低下、皮膚の紫斑、結膜炎および食欲の低下が散見されるのみであり、単独感染による重篤な症状は確認されない(表1)。
- JPN/1/2018株を接種した豚は唾液、鼻汁および糞便などの分泌・排泄物中から感染後最低2週間検出される。また、血中の抗CSFV抗体は感染2週間後以降に検出される。(表2)
成果の活用面・留意点
- 国内で26年ぶりに発生した豚熱の原因株によって引き起こされる本疾病の防疫における基礎的知見として活用が期待される。
- 本成果で明らかとなった感染豚におけるウイルス排泄期間および同居豚への伝播速度等のデータは野外における豚熱の疫学解析に活用される。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2018年度
- 研究担当者:亀山健一郎、西達也、山田学、舛甚賢太郎、森岡一樹、國保健浩、深井克彦
- 発表論文等: